【終了】静岡星陵高校で医療系セミナー『医学部入試の最新動向』を講演しました
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
今日は静岡県富士宮市にある静岡星陵中学校・高校が主催する医療駅セミナーで、『医学部入試の最新動向』と題した講演をお話しさせていただきました。
参加された皆さまが微動だにすることなく熱心に聞いていらっしゃるのを見て、ついつい時間をオーバーしてお話ししてしまいました。ご参加いただいた皆さま、そしていろいろとお気づかいただいた静岡星陵中学校・高校の教職員の皆さまに厚くお礼申し上げます。
講演の中でお話しできなかったことがたくさんありましたので、改めてこちらの記事にまとめました。お越しいただけなかった皆さまもよろしければ参考にしていただければと思います。
偏差値とはなにか
「偏差値というのは母集団の中での自分の立ち位置」という話をした後で、河合塾の入試難易度ランキングをご紹介させていただきました。
この場合の入試難易度は、当然ながら「河合塾の全統模試を受験した母集団における偏差値」を基準としています。よって、入試難易度72.5の慶應義塾大学医学部は、河合塾の全統模試で偏差値72.5の受験生が受験した場合、合格と不合格の割合がちょうど半々、1:1になるということを意味します。
すごいですね。全体の上位約1%に入る成績の受験生が受けても合格可能性が50%ということになります。慶應義塾大学医学部を受ける受験生たちの学力がいかに高いかということでもあります。
当然ながら、これが駿台の全国模試であれば「駿台の全国模試を受験した母集団における偏差値」が基準となり、東進模試であれば東進模試、進研模試であれば進研模試を受験した母集団における偏差値が基準となります。
受験の難易度について言及される時に、河合塾の偏差値が基準とされることが多いのは「大学受験を志す現役生・既卒生」が全国的にまんべんなく受けていることが理由です。問題の難易度も平均的で学習の到達度を計るテストとしては信頼できると言えるでしょう。
そういった背景をご説明しながら、入試難易度ランキング表のご説明をしたかったのですが、時間がなくてはしょった説明になってしまいました。改めてスライド資料を再掲いたします。
併願できる私立医学部の学校推薦型・総合型選抜
今年は新課程入試に移行する前年度ということもあり、これまでの例で言えば、推薦や総合型選抜で早めに合格を決めようと考える受験生が増えたり、国公立の出願が浪人を避けて手堅くなったりといった傾向があるはずです。
ただ、いろいろな高校の先生方と情報交換をしても、今年はどちらかと言うと受験生の動きは全体的に鈍く、なんとかなるのではないかといった楽観主義のようなものが感じられるということです。コロナが落ち着き、4年ぶりに様々な対面型イベントが開催され、世の中全体に明るいムードが戻ってきていることも関係あるのかもしれません。
入試は逆張り、他の受験生が動いていない時こそチャンスということで、私立医学部の学校推薦型選抜・総合型選抜の中でも併願できるものをご紹介させていただきました。
ご覧いただくとわかるのですが、5校のうち4校までが西日本の大学です。東日本で併願可能な学校推薦型・総合型選抜を行っているのは、共テ利用である東海大学「希望の星育成」選抜のみです。
これは、国公立医学部の数が西日本に偏っており、東海圏や関西圏を中心に国公立医学部志望の受験生が東日本に比べると多いため、彼ら/彼女らに「すべりどめ」として受験してもらおうという戦略の表れだと思われます。
また、この関西医科大学推薦、近畿大学推薦、大阪医科薬科大学「至誠仁術」入試、ふじた未来入試はすべて試験科目がバラバラでそれぞれに特色があります。自分の得意な科目や分野をどの入試なら活かせるのか考える必要があります。
国公立医学部の受験校の決め方
医学部受験生が国公立医学部の受験校を決める場合、大前提となるのが共通テストの得点ですが「国公立医学部に行ければ全国どこでも」と言っている受験生でも、やはりまず「地元の大学」を考える人がほとんどでしょう。
学力の優れた受験生は旧帝大など、より難易度の高い国公立医学部にチャレンジしていきますが、ほとんどの受験生は自分の学力で入れる大学、そしてできるだけ地元に近い大学を探して受験校を決めていきます。
また、個別学力検査(二次試験)の問題や配点なども受験校を決める要因として大きな要素を占めます。
今回の講演では、星陵高校の地元である浜松医科大学の合格最低点を例に「二次試験でどのぐらい取ればいいか」の目安を自分で考えてほしいという話をしました。
共通テストと二次試験、そして総合得点のすべてのデータを開示している大学ばかりではないので、浜松医科大学のように共通テストと総合得点の最低点のみ公表されている大学は、単純に総合得点の最低点から共通テストの最低点を引いて「最低限でもこれぐらい取る必要がある」と考えておく必要があります。
(厳密には共テの点数が最も低い受験生、イコール二次試験の点数が最も低い受験生のわけではありませんが、あくまで目安として)
医学部受験生と話をしていると、ここまできちんと考えている受験生は意外と少なく、共通テスト後の大手予備校が公表する「予想ボーダーライン」を基に出願する人がほとんどです。それ自体はもちろん間違ってはいませんが、それに信頼を置きすぎると振り回されることになってしまいます。
共通テストリサーチの罠
例えば、2023年度の浜松医科大学一般前期は大手予備校の予想ボーダーラインが低めに出た結果、受験生がこぞって出願し、前年には実施されなかった二段階選抜が実施されることになりました。第一段階選抜の足切りラインは649.0点(72.1%)と、合格者の最低率72.7%とほぼ変わらない、高いパーセンテージでした。
その結果、458人が出願して277人が第一段階選抜合格、実際には238人が二次試験を受験するという、200人近い受験生が門前払いを受ける結果となりました。
この「極端に共通テストのリサーチが低く出た大学には受験生が集まる傾向」は浜松医科大学に限らず毎年のように起こっており、特に共通テストの平均点が前年度から大きく変動した場合、さらにその傾向は強くなります。
今回、この浜松医科大学の二段階選抜について考察をお寄せいただいた保護者の方によると、大分大学でも同じようなことが起こり、志願者が集中した結果、395人が出願して197人が第一段階選抜合格、足切りラインは72.3%で200人近くが受験できないという事態になりました。
2023年度は共通テストの平均点が上がり、思ったよりも共通テストで得点できなかった受験生が安全圏と考えた地方国公立に出願した結果、足切りに合うというケースが見られたようです。これは共通テストの平均点が大きく下がった2022年度にも見られた傾向で、共通テストが荒れる年ほどリサーチの結果に振り回された受験生の動きに翻弄されるので注意が必要です。
また、ここでお詫びと訂正をさせていただきます。メルリックス学院から発行している【医歯学部入試総括2023】で浜松医科大学の二次試験における理科選択科目を「物理必須」としていますが、正しくは「物理・化学・生物から2科目選択」です。ご指摘いただいた読者の方、ありがとうございました。
浜松医科大学の学校推薦型選抜は「物理・化学・生物の3科目から出題」されますので、そちらと混同して誤った分析をしてしまいました。皆さまに深くお詫び申し上げると共に、今後はこのようなことがないよう、より一層チェック体制を確立してまいります。
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