情報センター長が見た医学部予備校と大手予備校の違い
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
先日、佐藤代表による【医学部予備校と大手予備校の違い】を何回かに分けて掲載しました。
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今回は前任時代も含めると30年近く医学部予備校で働いてきた私から見た、医学部予備校と大手予備校を比較しての違いをお話しします。
目次[非表示]
大手予備校が当たり前だった受験生時代
まず、多くの方と同じように、以前の私は「医学部専門の予備校がある」ということを知りませんでした。
自分が受験生だった頃は、地元にある「いわゆる大手予備校」に通っていました。
大手予備校では200人ほど入る大教室で、有名講師がマイクを使って授業をしていました。
一番前の席には取り巻きのような講師のファンが陣取っていました。
授業が終わるとファンに取り巻かれて講師が教室を出て行くのが常でした。
一度だけ、意を決して大手予備校の講師室に質問に行ったことがあります。
講師室のドアを開けると赤本の並んだ棚が目の前にありました。
部屋の中までは見えませんが、人の気配はありません。
ただでさえ緊張していた私は、慌ててドアを閉めてその場を立ち去りました。
自習室の席を取るにも並ぶ必要がありました。
夏休みや冬休みは朝イチで行って整理券をもらわなければなりませんでした。
近くのファーストフードで朝ごはんを食べながら開館を待ちます。
それを不便だと思うこともなく「予備校とはそういうものだ」と思っていました。
医学部予備校は全く別世界だった
医学部予備校で働くようになって、最初に思ったことは
「教室が小さい」
「授業料が高い」
まず、この2つに驚きました。
さらに「少人数制だから授業料が高いんだよ」という説明を受けて、なるほどと思いました。
また、講師だけでなく教務スタッフが何人もいました。
受付の私は生徒の顔と名前を全員覚えて声かけをして、気づいたことを先生方と共有しました。
受付に座っていると、生徒からありとあらゆることを相談されました。
「この辺に美味しいランチのお店ありますか」
「歯が痛いので評判の良い歯科クリニックを教えてください」
「好きな女の子がいて勉強に手がつきません」
「高校の調査書って3ヶ月以内の発行じゃないとダメですか」
「川崎医科大学を受ける時はどこのホテルに泊まればいいですか」
おかげで予備校の近所にあるお店やクリニックにとても詳しくなりました。
講師でもないのに入試情報に精通するようになりました。
出願書類を見ただけで、どの大学かわかるようになりました。
もともとよく人生相談される方でしたが、医学部予備校で働くようになってから、とんでもない数の相談を受けるようになりました。
医学部予備校は少人数制なので、先生への質問ももちろんできます。
というか、質問が歓迎されます。
質問に行かないと「もっと質問に行きなよ」と促されます。
講師からも声をかけられます。
毎朝、毎昼、毎夕、講師室には講師の横で質問をしている生徒がいます。
日課のように質問している生徒がいます。
出欠がタイムカードで管理されていて、保護者に定期的に連絡がいきます。
日々のチェックテストや全国模試の成績が保護者に送られます。
保護者会もあります。
予備校全体が自習室で、教室でも個別ブースでもどこでも自習することができます。
自習室の席を取るために困ることがありません。
これまで私が知っていた大手予備校とは全く別の世界がそこにありました。
医学部予備校の本当のすごさとは
しかし、それだけなら「ちょっと豪華で親切な予備校」にすぎません。
高級なスポーツジムでも、安価なスポーツジムでも、やることは同じです。
予備校も同じです。基本的には勉強するところです。
医学部予備校の本当のすごさとは、
1.生徒のどんな初歩的な質問にも根気強くつき合う
2.推薦や総合型選抜で自分に合った大学を選ぶやり方がある
3.全国模試の成績がそれほど良くなくても最終的に合格する
私なりにまとめるとこの3つになります。
1.生徒のどんな初歩的な質問にも根気強くつき合う
よく、医学部予備校のいいところに「質問に行きやすいところ」とあります。それは間違いではありませんが、実は質問のレベルが生徒によって本当に千差万別です。
驚くほど初歩的な質問から、込み入った過去問の解き方まで、ありとあらゆるレベルの質問をされるのが医学部予備校の講師です。
しかし、先生方は顔色一つ変えず、どんな質問にもわかりやすく淡々と最短距離で答えていきます。
ちなみに、何度も同じ質問をする生徒もいます。先ほどの授業で説明されたことをもう一度聞きに来る生徒もいます。
私からすると「そんな質問を講師にするなんて恥ずかしい」という質問でも生徒は平気でします。むしろ「わからないところをそのままにしないでほしい」と言って、そういった質問を歓迎するのが医学部予備校の講師です。
そして生徒のあらゆる質問に答えることによって、その生徒の学力レベルはもちろん、どういった問題に弱くて、どういった問題に強いかといった個々の特性まで講師が把握しているのが少人数制の強みです。
まさに医学部受験のプロフェッショナルです。
2.推薦や総合型選抜で自分に合った大学を選ぶやり方がある
私が受験生だった時代は、それほど推薦や総合型選抜(旧AO入試)が盛んではなかったこともあり、入試と言えば一般入試のことでした。
それが近年、私立医学部でもどんどん推薦・総合型選抜が増えており、出題科目や内容もバラエティに富んでいます。
そのバラエティに富んだ出題の中から、評定平均や得意科目・苦手科目、出身地などを考慮に入れて受験校を選ぶことで、一般入試では難しい学力の生徒でもスパッと合格することがあるのを医学部予備校に来て知りました。
問題が非公表の大学もある中で、情報を集めてその生徒に合った受験校を勧める。そしてそのための対策をする。対策が上手くいって合格する。
そういう方法で入学しても医学部に入ってから勉強についていけないのではないか?
そう思ったこともありましたが、意外にも(?)推薦組は優秀層とそうでない層の二極に分かれることが多いと、大学の方の話で知りました。
医学部に入ってからの成績は、医学の勉強に対するモチベーションで決まるんですよ、と大学の方に言われて自分の偏見を恥じました。
3.全国模試の成績がそれほど良くなくても最終的に合格する
私が受験生だった時は、全国模試の成績が返ってくると、まず偏差値を見て、次に合格可能性判定を見て一喜一憂していました。
志望大学ごとに、A,B,C,D,E・・・と出るあの合格可能性判定です。
ところが、医学部予備校にいると、合格可能性判定Eでも合格していく生徒がたくさんいます。むしろ、Aを取っている生徒の方がプレッシャーに弱いのか、不合格になることもあるぐらいです。
自分が現役時代に、合格可能性判定に一喜一憂していたのはなんだったんだ、と思います。
この不思議なからくりの謎が解けたのは、医学部予備校で働くようになってから、しばらくしてからのことでした。
まず、日々の勉強で無駄なことを全然していません。テキストには必要最低限のことしか載っていません。猛烈受験生だった私の感覚からすると、テキストが「薄い」です。
そのテキストがベースにあり、講師が少人数クラスの状況を見ながら、生徒達のレベルに合ったプリントを用意して学力の底上げをしています。
また、先生方は入試本番での解き方についても細かく教えています。大学ごとの形式。特徴のある大学。何番から解くべきか。この大問は何分で処理するべきか。どこで点を取るべきか。逆に点を落としてもいいところはどこか。
先生方は「満点を取る必要はない」と繰り返し生徒に言います。合格するためには、落としてはいけない問題を確実に取るのだと。そしてその見極め方を教えてくれます。
通常の集団授業の中でももちろん教えてくれますが、同じ講師のマンツーマン個別指導を取ると、さらに細かく自分に合った対策を教えてくれます。
テストゼミのような講座もあって、明らかに時間内に解けない問題をどうやって解くかという練習もさせられます。
これだけ的を絞って至れり尽くせりやれば、一般的な到達度を計る全国模試の成績がそれほど良くなくても、私立医学部のどこかに受かることは充分にあり得ます。
むしろ医学部予備校の全国模試で良い成績を取っている生徒は、何年も浪人していることが多く、大手予備校ごとの全国模試のパターンに慣れていたり、試験時間が厳しくない中で標準的な問題を解くことはできても、実際に時間の厳しい私立医学部入試ではなかなか実力を発揮できないこともあると知りました。
「不思議の国」ではなくなった医学部予備校
このように、最初は「不思議の国」だった医学部予備校ですが、今はもう私にとっては不思議ではありません。
すべての医学部受験生が、小さい頃から勉強が得意なわけではありません。
孤独にも誘惑にも耐える強い精神力を持っているわけでもありません。
けれど、そういう医学部受験生が概して心優しく、将来臨床医になった時は、患者さんの話を聞く良い医師になりそうなこともまた事実です。そういう医学部受験生のために、プロの講師集団が至れり尽くせり勉強を見る医学部専門の予備校があってもいいのではないか。そして、その過程で大人として成長していくということがあっていいのではないか。
そう思うようになりました。
また、医学部予備校の不思議さは、そもそも医学部入試の特殊さに繋がっています。
次回は受験情報センター長として医学部入試の不思議さについてお話ししたいと思います。
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