【2026年度】私立歯学部における偏差値と学費の関係

こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。

今日は歯学部進学を考えていらっしゃる方々のために、歯学部の入試難易度(偏差値)と学費の関係について解説したいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.歯科大学の歴史を振り返る
  2. 2.歯学部の入試難易度
  3. 3.私立歯学部の難易度はなにで決まる?
    1. 3.1.私立歯学部6年間学費ランキング(2026年度)
  4. 4.私立歯学部の学費と特待生制度
    1. 4.1.松本歯科大学が2026年度から学費を値下げ!
    2. 4.2.愛知学院大学が歯学部専願特待生制度を新設!
    3. 4.3.福岡歯科大学の専願S特待生選抜
    4. 4.4.岩手医科大学歯学部で2025年度から特待生制度を開始!
    5. 4.5.北海道医療大学の特待奨学生にB特待新設!
    6. 4.6.日本歯科大学は生命歯学部と新潟生命歯学部の学費が異なる
    7. 4.7.奥羽大学の特待生は一般選抜と同時に判定
    8. 4.8.大阪歯科大学の特待生制度
    9. 4.9.神奈川歯科大学と鶴見大学の一般1期特待生
  5. 5.歯科医師国家試験合格率と入試難易度の関係
    1. 5.1.第118回(2025年)歯科医師国家試験合格率

歯科大学の歴史を振り返る

日本全国に歯学部は国立11大学、公立1大学、私立17大学があります。日本の歯科教育の歴史は私立から始まっており、1890年(明治23年)髙山紀齋によって創立された髙山歯科医学院と、1907年(明治40年)中原市五郎によって創立された共立歯科医学校が同年、国より設置認可されたのが始まりです。

終戦時には8校の歯科医学専門学校がありましたが、戦後2校が廃校になり、残った6校が大学に昇格しました。この日本歯科大学、東京歯科大学、東京医科歯科大学、九州歯科大学、日本大学歯学部、大阪歯科大学の6校を「旧六」と呼びます。1952年(昭和27年)には大阪大学にも歯学部が設立されました。

その後、国は歯科医師数を増やす政策を行い、1961年(昭和36年)以降、全国に22校の歯学部が設立されました。今のところ、一番最後に設立された歯学部は1979年(昭和54年)の岡山大学と長崎大学です。

1982年(昭和57年)から国は一転して歯科医師削減に乗り出し、それ以降、歯学部は設立されていません。

歯学部の入試難易度

入試難易度という観点から見ると、国公立歯学部前期日程はおおむね共通テストで70%から80%前後が必要です。2025年6月に河合塾が公表した「入試難易度ランキング」では、前期日程で最も共通テストのボーダーラインが高いのは東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)歯学部で80%、最も低い徳島大学でも70%です。

国公立歯学部で後期日程を実施している大学は5校(東京科学大学、新潟大学、広島大学、徳島大学、鹿児島大学)しかなく、募集人員も少ないため、後期日程の方がボーダーラインは高くなっています。

一方で私立歯学部は国の施策による定員削減と、歯科医師国家試験の合格基準の引き上げに伴って二極化が進み、都心にある大学ほど難易度が高いのが現状です。同じく2025年6月に河合塾が公表した「入試難易度ランキング」では、最も偏差値が高いのは東京歯科大学1期、日本大学歯学部N方式(全学部統一入試)1期の55.0です。

歯学部は募集人員も受験者数も少なく、データが多くないせいか、2期や後期日程、共通テスト利用などの難易度は、大手予備校の偏差値ランキングには掲載されていません。いきおいブラックボックスになりやすく、受験生もどんな勉強をすればいいのか、どういう風に受験校を選べばいいのかがわかりにくく、これまでにも多くの歯学部受験生と保護者がメルリックスに相談にお見えになりました。
 

私立歯学部の難易度はなにで決まる?

さて、この歯学部の難易度はどういった要因によって決まっているのでしょうか?

私立医学部の難易度を決める三大要因は「学費・伝統・立地」ですが、私立歯学部は「伝統・立地」は当てはまるものの、「学費」は難易度においてそれほど重要な要因にはならないようです。

私立歯学部の6年間学費ランキングを見ると、私立歯学部の中でおそらく最も難易度の高い東京歯科大学は、17歯科大学の中で最も学費の高い大学でもあります。

私立歯学部6年間学費ランキング(2026年度)

大学名
明海大学
17,930,000円
朝日大学

17,930,000円​​​​​

松本歯科大学
20,080,000円

日本歯科大学(新潟生命歯)

21,000,000円

奥羽大学
21,500,000円
鶴見大学
26,250,000円
福岡歯科大学
26,300,000円

北海道医療大学

27,000,000円

昭和医科大学
27,000,000円
神奈川歯科大学
27,000,000円
岩手医科大学

27,600,000円

日本大学(松戸歯)
29,400,000円
愛知学院大学
31,141,000円

日本歯科大学(生命歯)

31,380,000円

大阪歯科大学

31,500,000円

日本大学(歯)

31,600,000円

東京歯科大学

31,900,000円

こうして並べてみると、むしろ学費の高い歯学部の方が、入試難易度は高い傾向にあることがわかります。最も学費の安い明海大学と朝日大学は姉妹校なので同じ学費体系です。

私立歯学部の学費と特待生制度

松本歯科大学が2026年度から学費を値下げ!

2026年度の私立歯学部は何と言っても、松本歯科大学の学費値下げが大きなニュースです。これまで6年間2528万円だった学費が、2026年度から2008万円に値下げになります。これで、明海大学、朝日大学に継ぐ3番目に学費が安い私立歯学部となりました。

また、これまでの特待生は、1種で若干名の募集となります。入学時は180万円、2~6学年は230万円が支給され、6年間の授業料が毎年70万円となります。(別途入学金50万円、諸会費38万円が必要)

特待生の判定は共通テスト利用選抜により選抜されます。英語(リーディング・リスニング)と数学(数学Ⅰ・A,数学Ⅱ・B・Cから1科目)、理科1科目が必要です。

愛知学院大学が歯学部専願特待生制度を新設!

一昨年、歯学部附属病院と繋がっている臨床教育研究棟を末盛キャンパスにオープンさせた愛知学院大学歯学部が特待生制度をパワーアップします。

特に、歯学部専願特待生制度は、6年間の免除額が1560万円と、約3100万円の学費がほぼ半額になる制度です。選抜人数は20名前期試験Aと共通テスト利用Ⅰ期が対象試験となり、得点率60%以上が条件です。基準を満たす受験生が20人より多い場合は、成績上位者から選抜されます。2年次以降は条件を満たせば継続して免除されます。

特待生に選出された場合、入学が条件となりますが、国公立大学に入学することになれば辞退可能です。他にも、愛知学院大学歯学部は、くすのき奨学生や新入生特待生などの特待生制度があります。(詳しくはこちらから)

福岡歯科大学の専願S特待生選抜

専願を条件とした特待生は2023年度から福岡歯科大学が実施しています。同じ福岡県に九州大学歯学部、九州歯科大学と2校の歯学部があるだけに、歯学部受験生のニーズを考えた制度になっています。

一般選抜A日程・B日程および、共通テスト利用選抜1期・2期・3期の入学希望者に、6年間の学費が1380万円(1250万円免除)になる専願S特待生制度を実施しています。国公立大学歯学部歯学科に入学される場合に限り、入学辞退が可能となっています。

岩手医科大学歯学部で2025年度から特待生制度を開始!

岩手医科大学歯学部では2025年度から大胆な特待生制度を導入しています。共通テスト利用、ないしは医学部入学試験利用選抜者の中から、成績優秀者5名を限度として6年間の学費が420万円、成績優秀者10名を限度として6年間の学費が960万円となります。(進級時の成績が上位3分の1以内に⼊らなければ、翌年以降の減免は停⽌)

北海道医療大学の特待奨学生にB特待新設!

北海道医療大学歯学部特待奨学生にはS特待、A特待がありますが、2026年度からB特待が新設されます。

S特待は国立大学と同水準の学費A特待は授業料の半額相当額が免除されますが、B特待は授業料の4分の1相当額が免除されます。

歯学部S特待は5名、A特待は5名、B特待は2名であり、Ⅰ期:一般選抜(前期)、共通テスト利用選抜(前期A・前期B) 、Ⅱ期:一般選抜(後期)、共通テスト利用選抜(後期)、Ⅲ期:一般選抜(後期B)、共通テスト利用選抜(後期B)を受験した人の中から選出されます。

特待生制度が拡充される代わりに、授業料は年間40万円ずつ値上げされ、これまでの6年間2460万円から2700万円になります。

日本歯科大学は生命歯学部と新潟生命歯学部の学費が異なる

また、日本歯科大学の生命歯学部と新潟生命歯学部は同じ学費でしたが、2024年度から新潟生命歯学部が新入生だけでなく在学生全員の学費減額に踏み切りました6年間の学費が1,000万円以上安くなる大胆な改定であり、在学生の学費も値下げするというのは極めて珍しいケースです。

日本歯科大学生命歯学部の特待生は、一般前期・共通テスト利用前期で若干名を募集し、入学金・授業料・教育充実費が毎年度すべて半額となり、6年間の学費が1569万円となります。

日本歯科大学新潟生命歯学部の特待生は、入学試験における成績上位者15名であり、6年間の学費が2100万円から1569万円に減額となります。15名の中には校友子弟、遠隔地居住者を含みます。

※私が日本歯科大学新潟生命歯学部オープンキャンパスに参加した時の記事はこちらからお読みいただけます。

奥羽大学の特待生は一般選抜と同時に判定

奥羽大学6年間の授業料が全額免除となる特待生試験を、一般選抜一期20名、二期5名、三期5名で募集します。選抜基準は入学試験の取得点数が80点以上、2年次以降の継続基準は進級試験の取得点数が80点以上となっています。

大阪歯科大学の特待生制度

大阪歯科大学の特待生制度は、一般選抜(前期)・一般選抜(全学部日程)で10名程度大学入学共通テスト利用選抜(前期)[5科目型]で5名程度を募集します。6年間の学費が国立大学と同程度となり、6年間の学費免除総額は27,685,200円となります。

この特待生制度は留年、休学、学則に違反するなど不適格と判断されない限り、特待生としての学費免除は継続されます。

昨年度までは学校推薦型選抜も特待生制度の対象となっていましたが、2026年度から推薦が併願制と専願制あわせて約30名と変更になるのに合わせて、対象が一般選抜と共通テスト利用選抜になりました。

神奈川歯科大学と鶴見大学の一般1期特待生

神奈川歯科大学鶴見大学歯学部一般1期の成績上位者に学費減免の制度があります。


神奈川歯科大学

成績順位
人数
減免額
1位
1名
395万円
2位~3位
2名
200万円
4位~15位
12名
100万円

鶴見大学

一般1期に出願した者、および学校推薦型選抜、総合型選抜、進路再発見入試、社会人特別選抜において合格し、入学手続きを完了した者で特待生選抜試験(一般選抜(個別選抜型)1期の日程のうち1月28日(水)が試験日)に出願した者が対象となります。

成績順位
人数
減免額
1位~3位
3名
350万円
4位~10位
7名
200万円

※ただし、成績上位者1位~3位のうち200点満点中160点以上、成績上位者4位~10位のうち200点満点中150点以上の者が対象。

また、2026年度入試からは共通テスト利用型の受験者のうち、300点満点中200点以上、かつ成績上位5名に対し、初年度学納金から200万円が免除になります。鶴見大学歯学部の共通テスト利用型は、共通テストの過年度成績(2023年度~2025年度)が利用可能であり、なおかつ二次試験はオンライン面接のみで来学が不要です。

歯科医師国家試験合格率と入試難易度の関係

それでは、歯学部受験生とその保護者が非常に気にしている歯科医師国家試験合格率は、入試難易度とどのぐらい関係しているでしょうか。

第118回歯科医師国家試験の合格率は12年ぶりに7割を超えました。全体の合格率が7割を超えたのは、第106回の71.2%以来となります。

第118回(2025年)歯科医師国家試験合格率

大学名
全体
新卒
北海道医療大学

(東日本学園大学歯学部を含む)

75.3%
91.7%
岩手医科大学
49.2%​​​​​
54.1%
奥羽大学

(東北歯科大学を含む)

45.5%
69.6%
明海大学
69.8%
83.8%
日本大学(松戸歯)
47.2%
61.0%
昭和大学
92.9%
97.7%
東京歯科大学

95.6%​​​​​

97.0%

日本大学(歯)
62.7%
71.4%
日本歯科大学(生命歯)
81.3%
93.3%
神奈川歯科大学
72.2%
79.1%
鶴見大学
61.0%
68.8%
日本歯科大学(新潟生命歯)
84.3%
88.7%
松本歯科大学
73.2%
90.7%
朝日大学
61.3%
95.9%
愛知学院大学
69.7%
85.4%
大阪歯科大学
72.8%
100.0%
福岡歯科大学
49.5%
53.5%

私立歯学部の国家試験合格率25年連続1位を続ける東京歯科大学が最も入試難易度の高い大学であることから、学費よりも国試合格率の方が入試難易度には関係ありそうです。それでも国試合格率の高い地方の歯学部よりも、都市部にある歯学部の方が難易度は高い傾向にあります。

例えば、日本歯科大学新潟生命歯学部や松本歯科大学は全体・新卒ともに、このところ高い合格率を誇っていますが、入試の難易度が急に上がるといった傾向はそれほど見られません。北海道医療大学や岩手医科大学などにも同じことが言えます。

◇◆メルリックス学院は日本私立歯科大学協会の賛助会員として承認されました。今後も私立歯科大学、そして歯科医療の未来のために微力ながら尽力して参ります◆◇

離島からの進学を応援!『島の子受験・進学特典』開始!<鶴見大学>


鈴村倫衣
鈴村倫衣
メルリックス学院医学部・歯学部受験情報センター長。四半世紀以上にわたって医学部・歯学部の受験指導、面接指導に携わり、多くの生徒を合格に導いてきた。医学部・歯学部入試に関する造詣は深く、大学から入試改革のアドバイスを求められることもしばしば。また、多くの生徒に接してきた経験を活かして、大学のFD研修に登壇するなど、高校のみならず大学でも多くの講演を行っている。

新着記事

他の合格体験記

受験攻略ガイド

カテゴリ一覧