第118回医師国家試験の結果を医学部受験のプロはどう見たか
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
第118回医師国家試験が2024年2月3日および4日に行われ、3月15日に合格発表がありました。大学別の合格率はこちらからPDFファイル(121KB)をご覧ください。
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第118回医師国家試験の合格発表がありました
第118回医師国家試験は10,614人が出願して10,336人が受験、合格者数は9,547人、合格率は92.4%でした。全体の合格率は5年連続で90%を超えました。
2024年4月からはいよいよ医師の働き方改革が施行されます。勤務医の時間外労働の上限が決められ、これまでのような長時間労働が難しくなるため、医師数を増やして全体の労働時間を減らそうという試みがなされています。
男性の合格率は91.7%、女性の合格率は93.6%と女性の方がわずかに高いのはいつものことで、合格者全体に占める女性の割合は3,307人、34.6%となっています。先日、2023年度の医学部入学者が4割を超えたと報道されましたので、今後も女性の比率が徐々に増えていくことになります。
自治医科大学が2年ぶりの全員パーフェクト合格
昨年は順天堂大学が新卒・既卒ともに全員合格のパーフェクトを果たしましたが、今年は自治医科大学がパーフェクト合格を果たしました。自治医科大学は一昨年まで3年連続で全員合格のパーフェクトを達成しており、1位に返り咲いた形になります。
「成績に課題がある学生向けに特別補講を行うなど、手厚い学習支援が奏功した」ということですが、直近12年間で11回が全国第1位という成績は全大学の中で圧倒的です。
新卒合格率100%は群馬大学、名古屋大学、東海大学
他に全体・新卒の中で合格率100%の大学は以下の3校です。
◎群馬大学(新卒)
◎名古屋大学(新卒)
◎東海大学(新卒)
ただし、東海大学は124人が出願して109人受験、109人合格しているので、卒業試験などで受験者を絞った可能性があります。このように医学部では国試合格レベルに達していないと判断された学生は卒業できず国家試験を受けられない場合があります。
新設された2つの医大は今年も高い合格率
昨年、一期生が卒業した国際医療福祉大学は今年も99.2%の高い合格率でした。131人の中にはアジアからの留学生が19人含まれています。昨年卒業したものの合格できなかった既卒生1人も無事に合格しています。
また、今年で三期目となる東北医科薬科大学の全体合格率は95.1%でした。東北医科薬科大学は2年連続で既卒生が全員合格しており、これまでに卒業した学生は全員が医師国家試験に合格していることになります。
この2校は教育システムもさることながら、新設されたばかりで既卒(国試浪人)が少ないことも、全体の合格率を維持する要因になっています。国試受験者の卒業年次を見ると、既卒1年目が最も多く485人、その後は徐々に減っていきますが、10回以上受けている人も71人います。当然ながら、浪人を重ねるほど合格率は低くなります。
医学部受験のプロはどこを見ているのか?
昨年も書きましたが、私は大学ごとの合格率の他に、出願者数と受験者数の差を見ています。出願者と受験者の差がおおむね5人以内であれば、それほど厳しい卒業基準を設けることなく、普通に学生を卒業させていると判断できます。
また、既卒生の合格率も見ます。心ならずも国試浪人となってしまった卒業生に対して、大学がどのぐらいサポートしているのか(またはしていないか)の目安になるからです。
卒業基準を厳しくて国試を受験する学生を絞ると、数年かけて成績不良者が溜まっていくので、どこかでその矛盾を持ちこたえられず、大きく合格率を下げることになります。
医師国家試験が入試のように絶対評価ではなく、下位の約1割を不合格とする相対評価で行われている以上、どうしても不合格者が出ることは避けられません。以前と違って、どの医学部も偏差値60を超える難易度を誇り、誰が不合格になってもおかしくありません。国家試験予備校のシステムも年々高度化しています。
よく「進学するなら留年者の少ない大学に行きたい」というご相談を受けますが、どの大学にも一定数の留年者はいるし、試験が厳しいのはどこも同じです。文部科学省から大学別の医学部の6年間ストレート卒業率が公表されていますが、平均値は約8割です。
また、大学の進級基準や卒業基準は突然変更になることもあるので、6年間を通してずっと同じカリキュラムとは限りません。重要なのは、入学してからどれだけ奢らずたゆまず勉強できるかだと思います。