【2001と2024を比較】私立大学医学部入試難易度ランキング
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
前回の記事【私立大学医学部入試難易度ランキング】は多くの方に読んでいただくことができました。それだけ入試難易度(偏差値)に興味を持っていらっしゃる方が多いのことを改めて感じました。今回の記事では今から約四半世紀前となる2001年度の入試難易度ランキングと今を比較します。
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私立大学医学部入試難易度ランキングを比較
【私立医歯学部受験攻略ガイド】が初めて発行されたのは2020年10月のことです。2021年度版として発行されたその本に掲載された入試難易度ランキングと、最新の2024年度版の偏差値を比較すると以下のようになります。
大学名 |
2001 |
2024 |
|
---|---|---|---|
1位 |
慶應義塾大学 |
71.3 |
72.5 |
2位 |
自治医科大学 |
67.3 |
68.5 |
3位 |
日本医科大学 |
66.6 |
69.0 |
4位 |
大阪医科大学
(現・大阪医科薬科大学)
|
66.5 |
68.5 |
5位 |
産業医科大学 |
66.3 |
67.5 |
6位 |
昭和大学 |
65.7 |
66.5 |
6位 |
関西医科大学 |
65.7 |
68.5 |
8位 |
東京慈恵会医科大学 |
65.4 |
70.0 |
9位 |
順天堂大学 |
64.7 |
69.0 |
10位 |
東海大学 |
64.4 |
64.0 |
10位 |
近畿大学 |
64.4 |
64.5 |
12位 |
杏林大学 |
63.8 |
64.0 |
13位 |
北里大学 |
63.7 |
63.5 |
14位 |
東京医科大学 |
63.6 |
66.5 |
15位 |
福岡大学 |
63.5 |
63.5 |
16位 |
兵庫医科大学 |
63.4 |
64.5 |
17位 |
日本大学 |
63.3 |
65.0 |
17位 |
久留米大学 |
63.3 |
63.0 |
19位 |
東邦大学 |
63.2 |
66.0 |
20位 |
岩手医科大学 |
63.1 |
63.5 |
21位 |
愛知医科大学 |
62.4 |
64.0 |
22位 |
藤田保健衛生大学
(現・藤田医科大学)
|
62.1 |
65.5 |
23位 |
東京女子医科大学 |
61.6 |
62.0 |
23位 |
金沢医科大学 |
61.6 |
63.0 |
25位 |
聖マリアンナ医科大学 |
60.8 |
63.5 |
26位 |
帝京大学 |
60.7 |
64.0 |
27位 |
川崎医科大学 |
60.6 |
62.0 |
28位 |
埼玉医科大学 |
59.2 |
63.0 |
29位 |
獨協医科大学 |
58.9 |
62.5 |
― |
東北医科薬科大学 (A方式) |
― |
68.5 |
― |
国際医療福祉大学 |
― |
68.5 |
― |
東北医科薬科大学 (B方式) |
― |
65.5 |
― |
東北医科薬科大学
(一般)
|
― |
64.0 |
23年前は「御三家」がまだ御三家ではない
2001年度版の製作時は初年度で実際の生徒データが少なかったこともあり、偏差値を現在のような0.5刻みではなく、0.1単位でできるだけ正確に算出しようとしていることがうかがえます。ちなみに翌年の2002年度版から、現在の0.5刻みの入試難易度ランキングになっています。
23年前のランキングを見ると、慶應義塾大学のトップは変わりませんが、いわゆる「御三家」と言われる私立医学部のうち東京慈恵会医科大学、また御三家に準ずるとされている順天堂大学のランキングがそれほど高くないことに気づきます。
また、東京医科大学より杏林大学や北里大学の方が上に位置しているなど、今よりも「旧設/新設」という区分が力を持っていた時代にも関わらず、旧設だから難しいと一概には言えないことがわかります。
ちなみにこの時代は、1972年前後に設立された新設医大ができてちょうど30年ぐらい経った頃です。【自校出身教授占有率】を算出してみると、新設医大は軒並み5%以下という時代でもありました。
学費(6年間学納金)ランキング
この時代の6年間学納金一覧を見てみましょう。
大学名 |
学費(円) |
|
---|---|---|
1位 |
産業医科大学 |
18,605,400 |
2位 |
慶應義塾大学 |
19,315,180 |
3位 |
東京慈恵会医科大学 |
22,500,000 |
4位 |
自治医科大学 |
(22,600,000) |
5位 |
東京医科大学 |
26,880,150 |
6位 |
日本医科大学 |
29,000,000 |
7位 |
関西医科大学 |
30,140,000 |
8位 |
順天堂大学 |
30,504,150 |
9位 |
昭和大学 |
31,300,000 |
10位 |
大阪医科大学 |
31,325,000 |
11位 |
聖マリアンナ医科大学 |
31,400,000 |
12位 |
東京女子医科大学 |
32,074,000 |
13位 |
東邦大学 |
32,265,400 |
14位 |
久留米大学 |
32,378,000 |
15位 |
岩手医科大学 |
32,980,000 |
16位 |
日本大学 |
33,100,000 |
17位 |
杏林大学 |
33,351,400 |
18位 |
近畿大学 |
34,833,000 |
19位 |
福岡大学 |
37,125,260 |
20位 |
獨協医科大学 |
37,300,000 |
21位 |
藤田保健衛生大学 |
37,466,000 |
22位 |
愛知医科大学 |
38,000,000 |
23位 |
兵庫医科大学 |
38,400,000 |
24位 |
北里大学 |
39,428,000 |
25位 |
埼玉医科大学 |
40,175,000 |
26位 |
金沢医科大学 |
40,182,000 |
27位 |
川崎医科大学 |
41,005,000 |
28位 |
帝京大学 |
41,475,700 |
29位 |
東海大学 |
42,081,200 |
東京慈恵会医科大学の一次試験日は2月25日だった
数IIIや面接がない私立医学部も
また、23年前と今とでは入試形式がかなり異なります。まずこの時代は数IIIまで課していない私立医学部がかなりありました。数I・II・Aもしくは数I・II・A・Bと軽量級で受けられたのは岩手医科大学、自治医科大学、獨協医科大学、埼玉医科大学、帝京大学、金沢医科大学、愛知医科大学、近畿大学、兵庫医科大学の9校です。
さらに、聖マリアンナ医科大学は数III・B・Cという不思議な出題範囲で、数IIIの積分、数Cの行列が必ず出題されていました。なんとなくですが、当時の医学部受験生の間には「数III(または数C)まで課す大学は難しい大学だ」という意識があったように思います。
また、二次試験がない一発勝負の大学も珍しくありませんでした。岩手医科大学、帝京大学、東海大学、関西医科大学、近畿大学、久留米大学、福岡大学は一次試験のみで二次試験はなく、帝京大学を除いては面接もありませんでした。
私立医学部の中で埼玉医科大学だけが3月に一般入試を行っており(今で言う後期入試)孤高の存在でもありました。
ランキングに見る「暗黙の序列」
私立医学部の志願者数は2000年度から2018年度までずっと右肩上がりで増え続けてきました。2000年度初頭はもちろん「私立医学部入試=難しい」という図式はありましたが、今のように一次試験も二次試験もすべてが重量級というわけではなく、入試区分も推薦入試と一般入試の2つぐらいで、それほど複雑なものではありませんでした。
また、この時代はまだまだ「医師のご家庭」が私立医学部を目指す割合が高く、入試難易度ランキングにも「医師の中にある暗黙の序列」のようなものが反映されていると感じます。今では新設医大も設立から50年以上が経ち、自校出身の医学部長や学長も輩出され、以前のような学閥意識は薄れていますが、この時代はまだ「新設の◎◎医大は△△閥」といった意識はありました。
この頃は新臨床研修医制度も始まっておらず、医学部を卒業した後は自校の医局に残るのが普通という時代でもあり、「病院の格」のようなものも入試難易度に反映されていたような気がします。
現在の方が「学費」や「交通の便」ですっきりとランキングが分かれており、ある意味とてもわかりやすいと思います。それだけ私立医学部を受験する一般家庭の方々が増え、難易度も上がったことで、効率を重んじる合理的な受験生が増えたと感じています。
新課程移行の前年度である2024年度の私立医学部入試がどうなるか、注目です。