catch-img

東海大学医学部<展学のすすめ>はどのような人材を求めているか

こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。


今日は私が個人的にお答えしている質問箱に来たご質問にお答えします。東海大学医学部<展学のすすめ>に関するご質問です。




目次[非表示]

  1. 1.いただいたご質問を再度ご紹介します
  2. 2.幅広い人材に受験してもらうために
  3. 3.特別選抜<展学のすすめ>の歴史
  4. 4.実績のある人を選抜するための4つの条件
  5. 5.実際に合格した方々の話を聞く
  6. 6.東海大学医学部の校風とは

いただいたご質問を再度ご紹介します

再受験生です。


東海大学の展学のすすめへの出願を考えています。
あるnoteで、活動報告書に記載できるような実績がないと受験は勧めないと書いてありましたが、この点について鈴村さんのご意見を伺いたいです。
「実績がない人を特別選抜するメリットがない」、「実績がない人は一般入試を受けてくださいという大学側からのメッセージだ」とのことです。


過去に目立った実績がなくても合格された生徒はいらっしゃいましたか?

このいただいたご質問に対して、私は以下のようにお答えしました。


目立った実績というのが何を指すかイマイチわからねど、気にせず受験して大丈夫です。謎の選良主義に染まって受験機会を一度逃すのは勿体無いです。

至って普通の回答で申し訳ないのですが、実際に「目立った実績が特にない方」も過去に合格されています。ここでその方の経歴をお話しすると却って失礼にあたるので、詳細を明かすことはできませんが、いわゆる普通の4年制大学に在学中または卒業された方で、【活動報告書】に何を書いたらいいでしょう?と聞かれた方も合格されています。


逆に言えば、英語外部試験の高いスコアを持っていらっしゃったり、在学中に書いた研究論文が認められたり、誰もが知る大企業に勤めていらっしゃる方でも落ちる方は落ちます。1次試験の英語・小論文200点と2次試験の面接240点を合わせた合計点で、募集人員である10番以内に入っていなければ普通に不合格になります。


幅広い人材に受験してもらうために

私としてはこれで回答は充分だと考えていたのですが、ふとご質問の「実績がない人を特別選抜するメリットがない」「実績がない人は一般入試を受けてくださいという大学側からのメッセージだ」という箇所に目が留まりました。


東海大学の入試をつかさどるメディカルサイエンスカレッジオフィスの方々とは日頃から情報交換をさせていただいております。また、現医学部長である森正樹教授とも実際にお会いしたことがあり、「ぜひ医師を目指す生徒達に読んでほしい」とご著書もお贈りいただきました。


私は件のnoteを拝読したことはないのですが、もしこの「実績がない人を特別選抜するメリットがない」という意見が医学部再受験生の間に広く流布し、東海大学展学のすすめを受験する人材が限定されることは、おそらく大学側にとっても本意ではないだろうと思い、改めてこの入試についてお話しさせていただきます。


ちなみに、私自身は「実績がない人を特別選抜するメリットがない」「実績がない人は一般入試を受けてくださいという大学側からのメッセージだ」というご意見もひとつの見解だと考えておりますので、それについて否定するつもりは全くないことを先に付け加えさせていただきます。毎年9,000人を超える人員を選抜する医学部受験において、様々な見解はあって当然と考えております。


特別選抜<展学のすすめ>の歴史

まず、この<展学のすすめ>はそもそも、東海大学医学部が1987年より実施していた編入学制度を基にした入試です。東海大学医学部は海外留学制度の実施や医局講座制の廃止など、早くから新しいことに取り組む気風がありました。


一時は1学年のうち40名を編入学試験で選抜していたこともありましたが、徐々にセンター利用や地域枠、総合型選抜(AO入試)など多様な入試制度が取り入れられ、2019年度からは<展学のすすめ>として1年次入学の再受験生向けの入試を10名で募集するようになりました。


<展学のすすめ>の実施目的は募集要項に以下の通り明記されています。


多様な社会を反映して、これまでの自身の学びと背景を活かし、自ら積極的に学ぶ強い意欲を持ち続けながら他の学生とともに成長し、将来その学識と経験をもって真に社会に貢献し、国際的にも活躍できる良医の育成を目的とします。


出願資格は編入学試験の時代からずっと変わりません。
2年次在学中の大学生でも受験できること、短大や専門学校・専修学校を卒業した人も受験できることが特色のひとつだと考えています。


1.4年制以上の大学(外国の大学を含む)を卒業した者(学士)、4年制以上の大学(外国の大学を含む)に2年以上在学し62単位以上を修得した者及び2024年3月修得見込みの者。
2.短期大学を卒業した者及び2024年3月卒業見込みの者。
3.高等専門学校を卒業した者及び2024年3月卒業見込みの者。
4.専修学校の専門課程(専門学校)のうち、文部科学大臣の定める基準を満たすものを修了した者、または高等学校の専攻科の課程のうち、修業年限が2年以上であることその他の文部科学大臣の定める基準を満たすものを修了した者(2024年3月修了見込みの者を含む)。


実績のある人を選抜するための4つの条件

さて、ここからが本題です。本当に「実績がない人を特別選抜するメリットがない」と考えているのであれば、まず大学在学中の人は除外されそうです。受験時にせいぜい1年半しか大学に在学していない受験生に目立った実績を期待するのはなかなか難しいでしょう。


また、実績を選抜の材料にしたいと考えるのであれば、書類審査も点数化した方がより反映されるのではないかと思います。国公立医学部の学士編入試験のように英語の外部検定試験やスコアを出願の条件に入れてもいいでしょう。


しかし、<展学のすすめ>の募集要項には以下のように明記されています。


第一次選考の結果と出願書類による書類審査を総合的に判断し選抜した第一次選考合格者に対し、第二次選考(個人面接)を行い、第一次選考結果と第二次選考結果を総合的に判断して合格者を選抜します。


第一次選考に「本学所定の書類による書類審査」は入っていますが、英語100点、小論文100点と明記されているのに比べ、書類審査は「総合的に判断」としか書かれていません。そもそも学科試験と呼べるのは英語だけであり、小論文は80分800字以内と時間的に余裕があり、これまでのところ医学に関係した平易な内容が出題されています。



第二次選考は計4回の個人面接になり、合計240点です。4回のうち1回は通常の個人面接になりますので、そこで医師志望理由や本学志望理由、経歴について聞かれます。面接官は出願書類を持っていますので、書類の内容が面接に関わってくることはありますが、それがそのまま加点されることはありません。


さらに言えば、第一次選考の学科試験200点、第二次選考の個人面接240点と、面接によるパフォーマンスの方が配点が高くなっています。以前は第一次:第二次=200点:200点と1:1だったのですが、<展学のすすめ>になってから第二次選考の配点が上がりました。


計4回の個人面接は、通常の個人面接・プレゼン面接・MMI×2回という内訳になっています。これまでの実績を重視するのであれば、当日のパフォーマンスによってブレが生じやすい面接試験の配点を高くする必要はありません。


このことからわかるのは、東海大学は出願資格を満たした上で、その受験生の人間性や個性を見極めて合否の判断を行いたいと考えているのではないかということです。もし実績重視の選抜を行いたいのであれば、


①出願資格をある程度厳しくする
②学力試験は英語だけでなく自然科学の総合問題など高度なものも課す
③出願書類にも配点を与える
④面接はこれまでの経歴を深く聞くスタイルにする


最低でもこれぐらいのハードルは課されるのではないかと思います。そして、書いてから気づいたのですが、国公立医学部の学士編入試験では結構こういったスタイルの大学がありますね。


実際に合格した方々の話を聞く

とはいえ、実際に合格される方の中に素晴らしい実績をお持ちの方がいらっしゃるのは事実でしょう。合格された方々にお話をうかがっているうちに「こういう人でなければ受からないのでは」と思ったとしても責められないと考えます。


これはまだ編入学試験の時代になりますが、まことしやかに「早慶枠がある」とささやかれたこともあります。実在するなら「早慶出身のメルリックス学院生も受からせてくれよ」と言いたいところでしたが、首都圏の私立医学部を受ける再受験生に早慶出身者が多いのはよく考えれば当然のことです。


そもそも学生数が多く、経済的に恵まれている方も多いでしょうし、卒業後(在学中)も首都圏に住んでいる方が大勢いて、医学部を目指そうと志すだけの学力がある。例えば、これが関西の医学部になれば話はまた違ってくるでしょう。(関西の私立医学部で編入学試験を実施している大学はありませんが)


また、医学部入試が難関であることは事実なので、実績が優れている人しか受からないのではないかという不安に駆られるのもある意味では当然のことでしょう。もし不合格になった時に「やっぱり実績がないからだ」と自分を責めてしまうようであれば、無理して受ける必要はありません。


そうではなく、自分はどうしても医学部に行きたい、そのためには一度たりともチャンスを逃したくない、可能性があるなら絶対に挑戦したいという気概のある方にこそ、チャレンジしてほしいと思います。またそのぐらいの気概がなければ、入学後の勉強に耐えることも難しいでしょう。


もう一度、書いておきます。不合格になった時に「自分の点数が足りなかったからだ」ではなく「自分は大した実績がないからだ」と考えてしまうようであれば、最初から受験しない方がいいと思います。不合格になった時のダメージが大きく、立ち直るのに時間がかかるからです。


東海大学医学部の校風とは

そもそも東海大学医学部は1974年に設立された若い医学部であり、以前は慶應出身の先生方が多いと言われた時代もありましたが、今は自校出身の医学部長も誕生され、学閥にとらわれることのない風通しの良い校風が特徴です。


現医学部長の森正樹教授(九州大学大学院医学研究科博士課程修了) も、医学部パンフレットの中で「東海大学は知識偏重の態度は取りません。人間各自に内在する特性の伸長を重視し、多様な個性ある人材を社会に送り出すことを目指します」とおっしゃっています。


2024年度<展学のすすめ>の出願は9月11日(月)から始まります。昨年は199名が出願し、192名が受験、1次合格28名、最終合格10名でした。今年も経歴や年齢にとらわれない幅広い人材が受験し、合格することを願っています。


森正樹教授から献本いただいたご著書には「一意専心」「一言芳恩」と書かれています。おそらく先生の座右の銘でしょう。ちょっとした一言であっても人からかけてもらった言葉に感謝し、目的に向かってひたすら心を集中する。人生において大切なこの2つの言葉を念頭に置いて私自身も医学部受験の情報を広く皆さんに伝えていきたいと思います。


◇◆東海大学医学部特別選抜<展学のすすめ>に関するメルリックスの分析はこちらをご参照ください◆◇





鈴村
鈴村
メルリックス学院医学部・歯学部受験情報センター長

新着記事

他の合格体験記

受験攻略ガイド

カテゴリ一覧