【国公立】医学部の男女別合格率2023年度が公開されました

こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。


2018年に起きた東京医科大学の不正入試事件をきっかけに、最終的に10大学の医学部医学科が「不適切」な入試を行っていたと指摘されました。以来、文部科学省は毎年、医学部医学科の男女別合格率を公表しています。


前回は主に私立医学部の男女別合格率について述べましたが、今回は国公立大学を中心に見ていきたいと思います。


※文部科学省から毎年公表されている医学部医学科の男女別合格率はこちらから


目次[非表示]

  1. 1.医学部の男女別合格率2023年度が公開される
  2. 2.国公立医学部50大学過去3年間の男女別合格率
  3. 3.東大理Ⅲは女性合格率の方が男性より高い
  4. 4.医学部の男女差別はなくなったのか?

医学部の男女別合格率2023年度が公開される

2023年度の医学部男女別合格率を国立・公立・私立大学ごとに比較すると以下の通りになります。



男性合格率
女性合格率
国立大学
31.5%
28.3%
公立大学
32.3%
30.0%
私立大学
8.7%
9.2%


国立大学・公立大学はいずれも女性合格率より男性合格率の方が高くなっています。


当時、不適切入試を指摘された神戸大学は地域枠推薦入試における過疎地域出身者に最大25点を加点していたというものでした。女子差別を指摘されたのは、東京医科大学、北里大学、順天堂大学、聖マリアンナ医科大学の4校でいずれも私立大学です。


このうち2023年度入試において、東京医科大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学の3校は【女性合格率】が【男性合格率】を上回っていました。


国公立医学部50大学過去3年間の男女別合格率

それでは国公立医学部の大学ごとの男女別合格率を詳しく見てみましょう。過去3年間の合格率をまとめたのが以下の表になります。



2021年度
2022年度
2023年度

男性
女性
男性
女性
男性
女性

北海道

29.91%

36.78%

32.5%

28.8%

31.8%

30.1%

旭川医科

28.22%

26.97%

33.3%

31.6%

24.2%

34.1%

弘前

41.11%

35.54%

26.4%

29.0%

22.2%

23.1%

東北

31.94%

24.32%

37.8%

23.4%

30.7%

29.5%

秋田

34.53%

33.12%

38.4%

32.3%

34.8%

27.9%

山形

32.00%

30.95%

25.7%

18.6%

25.0%

13.7%

筑波

36.77%

22.33%

35.3%

19.8%

32.6%

21.5%

群馬

37.50%

35.07%

42.0%

46.1%

43.4%

29.8%

千葉

35.68%

35.59%

39.1%

37.5%

38.6%

29.5%

東京

30.55%

22.08%

28.9%

29.5%

31.4%

42.2%

東京医科歯科

29.55%

27.74%

36.3%

30.1%

34.6%

23.4%

新潟

38.97%

23.64%

35.1%

24.8%

34.4%

28.3%

富山

31.78%

26.54%

45.4%

42.7%

33.2%

29.2%

金沢
48.33%

46.03%

45.1%

53.3%

46.6%

43.4%

福井

34.18%

34.31%

33.0%

29.4%

38.3%

35.6%

山梨

38.06%

25.49%

46.2%

42.0%

36.4%

32.0%

信州

32.05%

32.69%

33.2%

28.0%

36.5%

28.3%

岐阜

22.42%

25.29%

24.1%

20.4%

17.9%

24.6%

浜松医科

36.63%

26.06%

32.7%

37.3%

30.4%

30.9%

名古屋

29.92%

33.64%

71.8%

70.0%

44.2%

36.9%

三重

30.04%

34.44%

28.3%

40.3%

31.7%

27.2%

滋賀医科

35.10%

27.81%

35.1%

24.2%

27.6%

33.5%

京都

37.33%

32.89%

46.6%

33.9%

42.8%

38.1%

大阪

43.98%

26.56%

38.1%

35.2%

40.2%

41.4%

神戸

41.40%

39.33%

43.9%

40.7%

41.6%

42.5%

鳥取

28.78%

27.11%

39.3%

40.5%

25.2%

21.5%

島根

22.03%

24.27%

20.0%

19.4%

19.6%

17.8%

岡山

28.33%

28.87%

28.0%

27.6%

34.4%

34.2%

広島

23.19%

25.75%

18.2%

20.8%

27.8%

22.6%

山口

26.87%

24.00%

36.5%

31.7%

24.6%

23.8%

徳島

41.89%

44.44%

56.9%

50.0%

46.6%

46.4%

香川
26.97%
29.03%
33.2%
27.7%
27.6%
34.2%
愛媛
24.44%
23.68%
21.0%
26.5%
30.8%
28.4%
高知
22.00%
28.50%
27.3%
27.4%
19.0%
18.4%
九州
42.79%
42.62%
38.6%
50.0%
43.3%
45.0%
佐賀
27.49%
33.92%
34.6%
29.3%
28.4%
30.4%
長崎
25.81%
35.29%
26.7%
31.8%
35.9%
30.7%
熊本
30.94%
33.59%
27.6%
16.2%
28.2%
27.3%
大分
45.00%
49.37%
44.4%
43.9%
45.3%
40.4%
宮崎
25.00%
31.02%
33.9%
25.4%
27.3%
27.9%
鹿児島
33.70%
35.56%
36.8%
34.7%
29.5%
30.3%
琉球
28.50%
29.85%
22.9%
27.3%
24.8%
29.9%
札幌医科
34.92%
40.00%
38.8%
26.5%
29.2%
29.9%
福島県立医科
32.29%
27.38%
34.9%
25.3%
33.3%
32.7%
横浜市立
41.54%
43.56%
46.2%
43.3%
44.4%
35.8%
名古屋市立
34.97%
35.64%
60.7%
51.5%
35.3%
34.5%
京都府立医科
41.90%
36.36%
37.8%
40.4%
34.5%
35.3%
大阪公立
36.08%
37.86%
66.4%
51.0%
35.2%
27.1%
奈良県立医科
24.09%
15.45%
24.9%
18.8%
19.4%
17.1%
和歌山県立医科
39.61%
43.16%
39.7%
40.3%
55.2%
48.1%

女性合格率の方が高い年度は赤字としています。この表からわかる通り、3年連続で女性合格率の方が高い私立医学部は50大学中、琉球大学のみです。逆に3年連続で男性合格率の方が高い国公立医学部は13校あります。


表からは全体的に西日本の国公立医学部の方が女性合格率が高いことがわかると思います。


東大理Ⅲは女性合格率の方が男性より高い

例えば、東京大学理科三類の場合、2022年度、2023年度と2年連続で女性合格率の方が男性合格率より高くなっています。東京大学といえば女子学生の割合は2割ほどとされ、そのことが社会問題としてニュースになるほどですが、その多くが医学部医学科に進む理科三類では男性より女性の合格率の方が高くなっています。


ただ、理科三類の入学者101名のうち女性は27名、入学者に占める女性割合は26.7%と、国立大学全体の平均36.9%と比べると低い方です。ちなみに東京大学全体の入学者に占める女性の割合は、2023年度で22.6%とやはり2割程度にとどまっています。


そもそも理科三類の受験者300名のうち、女性は64名と全体の21.3%にとどまっています。ちなみに様々なところで目にしているかもしれませんが、2023年度の東大理三合格者ランキングの1位は灘高校で15名、2位は桜蔭高校の11名です。女性入学者の4割以上が桜蔭生ということになります。


医学部の男女差別はなくなったのか?

医学部不適切入試の発覚から5年、以前のように理不尽な男女差別はなくなったように見えます。少なくとも、多くの大学で指摘されたような「女性は一律減点」「◎歳以下の男性には△点加点」といった属性による一律的な差別はなくなったと言えるでしょう。


ただ、そもそも入試というのは男女や年齢といった属性だけでなく「こういう学生が欲しい」という大学の意図があり、その意図に沿って入試科目や形式、試験時間・配点が決められています。数学で重量級の記述式が出題される大学があったり、逆に全科目マークシート式で時間勝負の大学があったりするのは、その大学によって「欲しい人材」を選抜する方針があるからです。


正直なところ、不適切入試以後、各大学の情報開示は思ったより進まず、男女別合格率の公表こそ毎年行われていますが、年齢別合格率の公表は​​​​​​​最初に行われた「緊急調査」以来、全大学のデータは公表されていません。


完全に「差別はなくなった」と言うには、公表されるデータが充分ではないといったところでしょうか。社会的に騒がれた男女差別についてはかなりの改善が見られたと思いますが、年齢やその他属性での差別がなくなったと言うには、公表されているデータは充分ではないというのが本音のところです。


医学部受験生としては「行きたい大学を受ける」「自分に合った大学を受ける」という基本は押さえつつも、その大学が公表しているデータには少なくとも目を通しておくべきでしょう。

鈴村
鈴村
メルリックス学院医学部・歯学部受験情報センター長

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