国公立大学医学部の攻略法|関西地区編

こんにちは。
メルリックス学院 講師長の瀬川です。
普段は大阪校と名古屋校で数学を教えております。


今日は主に関西の医学部受験生に向けて、関西の国公立医学部に合格するためにはどうすればいいか、そして私立医学部はどういったところを併願すべきかをお話しします。



目次[非表示]

  1. 1.まずは科目ごとに自分の「予想点」を出してみる
  2. 2.実際に大阪医科薬科大学でシミュレーションしてみよう
  3. 3.国公立医学部の目標点を出すには工夫が必要
  4. 4.京都府立医科大学と神戸大学はどちらが難しいか?
  5. 5.神戸大学は易問高得点型の受験生に有利?
  6. 6.奈良県立医科大学と和歌山県立医科大学
  7. 7.私立医学部を併願する場合の注意点

まずは科目ごとに自分の「予想点」を出してみる


関西地区には全部で12校の医学部があり、内訳は国立大学4校、公立大学4校、私立大学4校となっています。そのためか医学部受験生の間でも「国公立志向」が顕著に見られます。このあたりは国立大学3校、公立大学1校、私立大学16校と私立に偏っている首都圏の医学部とは全く条件が違います。


ここでまず、皆さんにぜひやっていただきたいことがあります。
自分が受験しようと思っている大学の合格最低点を調べて、合格のためにはどのぐらいの点数が必要かを確認してください。
次に、その大学の過去問を見て今の自分ならどのぐらいの点数が取れそうか、科目ごとに書き出してみてください。
そして、今の自分の「予想点」と実際の「最低点」との差を知ってください。


これは国公立、私立に限らず必ずやっていただきたい作業として、指導している生徒さんにも繰り返し伝えています。


実際に大阪医科薬科大学でシミュレーションしてみよう


例えば、大阪医科薬科大学を例に挙げてみましょう。このところの大阪医科薬科大学の前期正規合格最低点は250点~263点ぐらい。大阪医科薬科大学は4科目100点ずつで合計400点ですから、取れそうなパーセンテージがそのまま得点になります。


【Aさんの場合】

                
英語

70

数学
40
化学
60
生物
70
合計
240

この場合、合格点まではザックリ20点ほど足りないということになります。
では、その20点をどこで取るか?


Aさんは明らかに数学が苦手(予想点40点)ですから、ここで上積みすることはあまり現実的とは言えません。
英語の英訳と和訳を講師に添削してもらい、これまで以上に磨きをかけることで現在の70点から75点ぐらいまでは上げられるかもしれません。
また、化学の学習がまだまだ追いついていないようですから、自分の弱い分野を潰すことによって60点から70点ぐらいにはアップできそうです。
さらに、得意な生物をもう少し詰めればプラス5点で75点。これで260点です。


このように現在の自分の「予想点」と「最低点」の差を知ることで、今の自分が何を重点的に勉強しなければいけないかが見えてきます。全体的に足りないのであれば、まずは全科目の基礎固めが先です。


国公立医学部の目標点を出すには工夫が必要


さて、前項では大阪医科薬科大学を例に挙げて説明しましたが、これが国公立医学部の場合、少し手間がかかるので工夫が必要です。


例えば、大阪大学や大阪公立大学は「共通テスト」「二次試験」「総合点(共テと二次の合計点)」とすべてのデータを公表しています。このような大学はいいのですが、京都大学や京都府立医科大学のように「総合点」のデータしか公表していない大学もあります。神戸大学のように最高点と最低点は「総合点」のみ公表し、平均点は「総合点」と「共通テスト」の両方を公表している大学もあります。大学によってバラバラなのです。


「総合点」のみを公表している大学は、自分で「共通テスト」と「二次試験」でそれぞれどのぐらい取らなければならないかを考えなければいけません。この時にお勧めしたいのが、大手予備校等が公表しているボーダーラインの数値を参考にすることです。


例えば、京都府立医科大学の2022年度入試における総合点最低点に、河合塾からお借りした「合格可能性20%」のボーダーライン432.00点 (72.0%) を当てはめてみると、次のような表になります。


最高点
最低点
平均点
共通テスト
432.00点 (72.0%)
二次試験
314.50点 (44.9%)
総合点
1003.50点 (77.2%)
746.50点 (57.4%)
858.41点 (66.0%)

※二次試験の最低点は総合点746.50点から共通テスト432.00点を引いた点数で算出


二次試験の最低点が5割を切っており約45%程度であることがわかります。過去にさかのぼって算出しても5割を超える年はほとんどなく、これは相当に問題が難しいだろうと過去問を見なくても推測できるわけです。それをもとに今度は二次試験の過去問を見て、科目ごとに現在の自分が取れそうな「予想点」を出していきます。


もし、自分がどちらかと言うと二次試験より共通テストが得意であれば「合格可能性20%」ではなく「合格可能性50%」のボーダーラインで算出してみてもいいかもしれません。
その場合、受験する大学も共通テストの配点比重が高い「共テ逃げ切り型」の方が有利かもしれませんから、共テ450:二次600の京都府立医科大学よりも、共テの配点比率が高い福井大学や富山大学、共テと二次の配点比率が全く同じ滋賀医科大学なども受験校の候補に入ってくるかもしれません。


京都府立医科大学と神戸大学はどちらが難しいか?


それでは関西にある国公立医学部ので数学が特徴的な大学を見てみましょう。


まず、目につくのは京都府立医科大学の数学が非常に難しいこと。
そして、神戸大学の数学は驚くほどやりやすい問題が並んでいることです。


ここで先ほどの「予想点」を算出するための表に戻ると、京都府立医科大学の二次最低点が5割を切っていることに納得がいくと思います。京都府立医科大学は数学以外の科目も化学を中心に一筋縄ではいかない問題が並んでいます。こういった難問系の問題で粘り強く得点できるタイプの受験生にとってはお勧めの大学です。


以前、メルリックスから数学が苦手な生徒さんが京府医に合格されたケースがあります。これも戦略が上手くはまった例ですが、全く正反対の「数学だけが突出して得意」な受験生にもチャンスがある大学だと思います。時々医学部受験生に見受けられる、理数科目が得意で数学が非常に突出してできるタイプの受験生は、難問系の数学でも圧倒的な得点をたたき出しますから、思いきって狙ってみてもいいでしょう。


神戸大学は易問高得点型の受験生に有利?


次に神戸大学ですが、数学の問題を見てみると非常に易しいレベルの問題が並んでいます。受験生がちゃんと勉強してきたかどうかが素直に得点に反映される問題です。


神戸大学が公表しているデータに河合塾からお借りした「合格可能性20%」のボーダーライン280.800点 (78.0%) を当てはめてみると、やはり二次試験の最低点が75%を超えています。


最高点
最低点
平均点
共通テスト
280.800点 (78.0%)
300.863点 (83.6%)
二次試験
338.880点 (75.3%)
351.350点 (78.1%)
総合点
720.600点 (89.0%)
619.680点 (76.5%)
652.213点 (80.5%)

※二次試験の最低点・平均点は総合点から共通テストを引いた点数で算出


このデータを見ると、神戸大学がどういう学生を欲しがっているかという傾向がうかがえます。これまでコツコツと勉強してきた易問得点型のタイプが得意な受験生にとっては、神戸大学はねらい目と言えるでしょう。


しかし、この2校は河合塾の入試難易度ランキングでは、神戸大学:67.5、京都府立医科大学:65.0となっています。それを見て「京府医の方が易しいんだ」と思うのはちょっと早計にすぎることがおわかりいただけたかと思います。自分と問題の相性が良い大学というのはやはりあるのです。


奈良県立医科大学と和歌山県立医科大学


他に関西の国公立医学部で特徴的なのは奈良県立医科大学でしょう。数学は単科大学特有の変わった問題が出題される上に、配点にも特徴があります。



前期二次試験は英語150点、数学150点、理科1科目150点の450点満点。
後期二次試験は英語225点、数学225点、理科2科目450点の900点満点。


いずれも理科の配点が他の国公立医学部に比べて高いのが大きな特徴です。
これまで指導してきた生徒さん達の結果を見ても、現役生にとってはどちらかと言うと厳しく、浪人生の中でもかなり理科が得意で仕上がっている受験生に有利な医学部です。


また、立地の良さから関西の医学部受験生には人気の高い大阪公立大学ですが、数学を筆頭に理数科目は非常に難しい問題が出題されます。にも関わらず、合格最低点を見るとかなりの高得点を要求されています。理数科目の突出した学力が必要であり合格は簡単ではないと申し上げておきます。


また、産科枠の新設で話題になった和歌山県立医科大学は、問題の難易度と合格最低点を合わせて見た場合、全国募集の県民医療枠(地域枠)はねらい目のように思います。大学が公表している合格点には地域枠も含まれていると思われます。地域枠は一般枠と併願することはできませんが(だからこそねらい目なのですが)将来、和歌山県の地域医療に従事してもかまわないという受験生は検討する余地はあると思います。


私立医学部を併願する場合の注意点


さて最後に、国公立医学部志望者が関西の私立医学部を併願する場合の注意点についても触れておきましょう。



関西の私立医学部は総合大学である近畿大学を除き、基本的に医療系学部を持つ単科大学なので、国公立医学部と併願しやすい試験時間や問題構成になっています。特に大阪医科薬科大学に関しては、国公立大学の勉強をしていればほぼ困ることはないと思います。



関西医科大学、兵庫医科大学も英語と数学の試験時間は80~90分、理科は120分と試験時間に余裕があります。近畿大学のみ英語60分、数学60分といわゆる私立医学部の「速く正確に答を出す」能力が要求される試験時間となっています(理科は2科目120分)。こういった違いが「大医に合格して近畿は補欠だった」という、必ずしも偏差値通りに受からない私立医学部入試の特徴となっています。


そういう意味で、国公立医学部の中で私立に近いのは奈良県立医科大学の試験時間です。前期は3教科180分という、かつての帝京大学医学部と全く同じ試験時間となっています。180分を自由に使うことができますので、どの教科から解くか、どのぐらい時間をかけるかといった戦略をあらかじめ考えておくことが必要になります。
ちなみに後期は英語105分、数学120分、理科2科目180分という一転して重量級の試験時間になりますので注意が必要です。


メルリックス学院の大阪校と名古屋校は地域性もあるのか、国公立医学部を目指す生徒さんも多くお見えになります。
もしよろしければ受験相談にお越しください。関西の国公立医学部の【過去3年間の合格点データ集】を差し上げます。










瀬川 耕一
瀬川 耕一
メルリックス学院の講師長です。講師全体の責任者であり、数学科の講師として多くの医学部受験生の合格に携わってきました。数学がどんなに苦手な生徒も諦めずに最後まで合格に導く手腕はカリスマ講師と呼ばれています。

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