出題者の意図を汲むことが必要|生物科解答速報チームより
こんにちは。
メルリックス学院の生物科解答速報チームです。
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生物という科目の性質
今年、メルリックス学院では17大学21入試の解答速報を行いました。
解答速報を作成していると、講師の間で問題文の解釈を巡って解答が分かれることがあります。特に生物は科目の性質上、そういったケースがたびたびあります。
例えば、今年の杏林大学の生物には解釈が難しい問題がありました。
「全て選べ」は消去法が使えない
大問[3]の問3で胞胚の一部を切除し、接着させて培養する問題が出題されましたが、1~6の選択肢のうちから分化が確認された細胞として適切なものを全て選べというものでした。
選択肢として挙がっているのが胃の上皮細胞や肝細胞など、かなり具体的なものであり、初期胚から分化するとは必ずしも言い切れないと思われます。これが「1つ選べ」であれば、消去法から最も確実なものを1つ選ぶことができますが、問題文では「全て選べ」となっているので正確な知識が問われます。
おそらくこの問題は、選択肢にある細胞が「外胚葉・中胚葉・内胚葉のうちどれから分化したものですか?」と聞きたいところを、実験考察問題として問い直しているものであろうと解釈しました。出題者の意図を汲んで中胚葉由来の組織を正解としましたが「その後培養を続ければ本当に筋肉や脊索の細胞が分化するかは疑問が残る」という注釈は必要と思われます。
特定の教科書に紹介されている、典型的ではない実験が扱われる場合
もう1題は大問[4]のミツバチの実験考察問題です。
この実験は実験1がオペラント条件付け、実験4が古典的条件付けが正解と思われますが、実験1の文章に微妙な部分があり、迷いなく正解を選ぶのは難しかったかもしれません。
実験1は「オペラント条件付けか古典的条件付けか?」と迷いながら先に進むと、実験4で古典的条件付けが出てくるので、出題者の意図を汲んで実験1はオペラント条件付けだろうと推測できるようになっています。
実際に実験1の問題は、ある生物の教科書にオペラント条件付けの例として掲載されています。ただ、その教科書の文章がかなり迂遠な書き方をしており、それが問題文では簡略化されており、却って解答する際に迷う部分が出てきてしまいました。
オペラント条件付けで最も有名なのは「スキナー箱」と呼ばれる、レバーを押すとエサが出てくる箱にネズミを入れる実験です。ネズミはたまたまレバーを押してエサが手に入る経験を繰り返すうちに、エサを手に入れるために意図的にレバーを押すようになります。
ただ、この実験はあまりにも有名であるために、出題者は違う実験でオペラント条件付けを取り扱いたかったのだろうと推測されます。
正確な知識が何より大切
このように生物では単なる知識問題でなく、実験考察問題も多く出されるため、出題者の意図を考えながら正解を導き出すことも時には必要です。
しかし、それができるのは正確な知識あってこそだと思います。改めて生物という科目の性質、そして難しさについて考えさせられた今回の解答速報でした。