第1回 私立医学部の繰り上げ合格・補欠合格について
こんにちは。
メルリックス学院代表の佐藤正憲です。
国公立大学医学部一般前期の合格発表も出揃い、そろそろ私立医学部の繰り上げ合格・補欠合格が本格的に動き出す時期になってきました。今日は私立医学部の繰り上げ合格・補欠合格についてご説明します。
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最初に私立医学部の繰り上げ合格・補欠合格について説明しておくと、まず二次試験終了後に大学が合格者を発表します。これを「正規合格者」と呼びます。それとは別に今後繰り上げ合格・補欠合格の可能性がある受験生を「補欠候補者」として発表します。(大学によっては、この補欠候補者を出さない大学もあります。例えば東邦大学や帝京大学、川崎医科大学等がそうです)
この「正規合格者」の中には入学手続の締切日までに手続きをしない人もいます。また、手続きしたものの途中で別の大学から合格通知が届き、そちらに行きたいからと入学を辞退する人もいます。一学年の定員は大学によって決められていますから、定員を満たさない場合に順次、大学から「補欠候補者」に連絡が入り、繰り上げ合格・補欠合格となるシステムです。以下、具体的に見ていきましょう。
1.繰り上げ合格・補欠合格ができた背景
そもそも医学部に限らず、私立大学は多くの大学・学部を併願できるというシステム上、以前から繰り上げ合格・補欠合格を出すことは当たり前でした。さらに、2016年度には文部科学省による私立大学の定員厳格化が通達され、定められた人数を超えて入学させた大学には助成金を厳しくカットすることとなりました。それにより、各大学ともより一層、警戒感が強まり、正規合格者を少なめに出しておいて、後は繰り上げ合格・補欠合格で調整するという傾向が強くなりました。
こういった傾向は国からの補助金が他学部よりも多い医学部では以前からあり、それが3月下旬の1人辞退が出るごとに1人繰り上げ合格・補欠合格になるというあの目まぐるしい状況に繋がっていました。私立医学部としては経営の上でも定員ギリギリまで学生を入学させたいため、欠員を出さないために入学式当日まで繰り上げ合格・補欠合格を出す大学もあります。
医学部の不適切入試が指摘された2019年度入試以降、文部科学省からの監視が厳しくなり、定員を大きく超えた正規合格者を出しにくくなったこともこの傾向に拍車をかけています。
2.補欠合格と繰り上げ合格の違い
この2つの言葉の違いについてよく聞かれます。人によって解釈は様々かと思いますが、我々医学部予備校としては、最初の合格発表で合格になった人を「正規合格者」、その際に繰り上げの可能性があるとして発表される補欠を「補欠候補者」、その中で学から追加合格の連絡が来た人を「繰り上げ合格者・補欠合格者」と呼び分けています。「補欠候補者」というのは「今後の入学手続きの状況次第では追加合格の可能性がある状態」のことを言い、その時点で合格とは見なしていません。
先に補欠候補者を発表しない大学もあると書きましたが、補欠候補者全員に繰り上げ合格・補欠合格が回り切って、二次試験を受けたものの補欠候補者に入っていなかった受験生のところに追加合格の連絡があるケースもあります。このケースについては後述します。
3.大学からの連絡手段
追加合格の通知は大学からの電話が殆どではありますが、電報、簡易書留などもあります。
北里大学医学部や川崎医科大学などのように、2月中は電報(レタックス)が使われることもあります。
他にもまだ繰り上げ合格・補欠合格が本格的に回っていない2月から3月上旬にかけての時期は、電話がなくいきなり自宅に入学許可証が届くケースもあるようです。
最近はインターネット上で連絡が来て、そのまま追加合格通知や入学手続書類をダウンロードするというケースもあります。
3月下旬はほぼすべての大学で電話による連絡になります。出願時に登録した電話番号はすべてチェックしておき、どれか1本は必ず出られるようにしておくことが重要です。着信に気づいたらすぐに折り返すこと。稀に非通知でかかってくることもあるので注意が必要です。また、携帯電話の番号を変更した場合は、あらかじめ大学の入試担当部署に番号変更の旨を連絡しておきましょう。
4.同点の場合の合否基準
医学部の不適切入試事件以来、多くの大学が入学募集要項に「合否判定の出し方」について詳しく記載するようになりました。
同点の場合は、特定の科目の得点の高い方から優先的に順位を決定する大学がほとんどです。英語や数学などの主要科目、面接点、小論文など大学によって様々ですが、例えば、合計点が同点で次に合否を判定する基準となる英語でも同点の場合、さらに次の数学で合否を判定するといった方法で合否を決定します。
5.補欠番号の出し方
東京医科大学の不正入試事件以来、文科省の指導が厳しくなり、これまで繰り上げ順位・補欠順位を出していなかった私立医学部の多くで順位を出して発表するようになりました。
ただ、そもそも補欠候補者そのものを発表しない大学もあり、東邦大学や東北医科薬科大学、帝京大学、川崎医科大学がそれにあたります。川崎医科大学は以前は補欠候補者のところに通知が届いていましたが、近年はなくなり二次受験者は理論上、全員「補欠候補者」という扱いになっています。
繰り上げ順位・補欠順位も補欠候補者全員に番号を振る大学もあれば、番号ありの1次補欠と番号なしの2次補欠に分けて出す大学もあります。このような二段階方式を取る大学は愛知医科大学、関西医科大学、兵庫医科大学等です。
補欠候補者の人数は年によって異なり、その年の入試日程や他大学との併願状況、前年度のデータ等から大学が歩留まり率を予測して発表します。例えば、このところ繰り上げ合格・補欠合格の人数が年々減少している東京慈恵会医科大学は今年、少なめに補欠候補者を出していますし、最近は1回目の繰り上げ合格・補欠合格でほぼ定員を充足する昭和大学は1期の補欠候補者を昨年より減らしました。
また、獨協医科大学のようにそもそも30番ぐらいまでしか補欠候補者を発表せず、補欠通知が来ていない人にも繰り上げ合格・補欠合格が回ることが慣例となっている大学もあります。
6.繰り上げ合格・補欠合格はいつまで待てばいいか
繰り上げ合格・補欠合格の連絡が入るのは3月31日までが通例です。これはこの日を入学辞退の手続締切日としている大学が多く、4月に入ってから入学を辞退すると入学手続納付金が全額徴収されてしまうからです。理論上は3月31日で入学者は確定します。
しかし、実際は4月に入ってからも数人動くケースがあり、大体4月3日頃までがひとつの区切りになるでしょう。
入学式当日の繰り上げ合格・補欠合格というのもありますが、数としてはやはり少なく非常に稀なケースと言えるでしょう。大学に聞いたところによると、特に繰り上げ合格・補欠合格の期限は入学式までと決まっているわけではないそうですが、学年そろってのオリエンテーションや入学式までに入学を確定する大学がほとんどです。
7.二次試験不合格者の繰り上げ合格・補欠合格の可能性
稀に補欠候補者全員に繰り上げ合格・補欠合格を出したものの定員の充足に至らず、二次試験不合格者として何の通知も来ていなかった人のところに繰り上げ合格・補欠合格が回ってくることがあります。
2021年度入試は特にそういったケースが多く、東京医科大学、北里大学、岩手医科大学は二次試験不合格者のところにも繰り上げ合格・補欠合格が回りました。因みに2021年度は共通テスト元年で難易度がよめないこともあり、上位私立大学への併願者数が増えた年でもありました。
また、さらに稀なことに一次試験で不合格になった人のところに連絡があり、追加で二次試験を行ったり、そのまま追加合格になるといったケースがあります。過去に関西医科大学や金沢医科大学などでそういったことがありましたが、これは極めて稀なケースと言っていいでしょう。