catch-img

2023年度医学部入試概況 第1回 | 代表室より皆様へ

こんにちは。
メルリックス学院代表の佐藤正憲です。


これから定期的に2023年度の医学部入試について書いていこうと思います。
第1回の今日は川崎医科大学の数学難化から私立医学部入試の特殊性について掘り下げます。


ここまで7大学の2023年度入試を終えての私なりの所感です。


目次[非表示]

  1. 1.川崎医科大学の数学難化がもたらすもの
  2. 2.数学難化の傾向が見られた大学
  3. 3.理科の難易度と得点調整
  4. 4.大学からのメッセージを読み取ること


川崎医科大学の数学難化がもたらすもの


川崎医科の入試の日は、私も岡山県倉敷市まで生徒を激励に行っておりました。
帰って来た生徒達の話によると、数学と物理が難しかったとのことでした。


昨年度も川崎医科は数学の難化が著しい年でありました。
そのような年こそ、数学の苦手意識を克服できなかった受験生には有利になります。
出来る問題を正確に解答することさえ心がける。
これさえ出来れば、数学を得点源にしている受験生との差を縮めることができます。
なぜなら数学が得意な受験生ほど、問題が難しくなった時に焦ってケアレスミスを起こして自滅していくケースがあるからです。


特に川崎医科は学納金の高さや本学のみでの試験実施など、受験生にとっては受けにくい要件が揃っていると思われます。
よって、数学の問題が難化してもそれでも高得点を取ってくるような圧倒的な学力のある受験生は少ないと考えます。


逆に数学が苦手な受験生は手の付けられる問題だけを手を付け、正確に解ければ、数学を得点源にしている受験生との差が圧倒的に縮まることになります。


数学難化の傾向が見られた大学


同じようなケースで、今年度の杏林もどちらかと言うと数学、物理が難しく、東北医科薬科も数学の半分が標準問題、半分が骨のある問題であったとのことです。
解答速報を作成している数学科講師陣によると、合格の基準となる点数は杏林5割5分程度、東北医科薬科は5割程度と予想しています。
決して高い得点率ではありません。


藤田医科の数学も論述部分が著しく難化したようです。こちらはマークシート部分の合格予想ラインは90/120点と昨年に引き続き易しい問題構成でした。
問題は論述部分で20/80点あればマークシート部分と合わせて勝負になるでしょうとメルリックス名古屋校の講師陣が予想してくれています。
さすが名古屋校は藤田医科のお膝元、彼らの予想はかなり正確ですので私も信頼しています。


実は昨年度も数学が難化した大学がいくつかありました。
先ほどの川崎医科、そして東京女子医科、近畿です。
そのような年こそ、数学の苦手意識を克服できなかった受験生には有利になります。昨年度のメルリックスでも数学の苦手な生徒達がこの3校の合格をしっかりと取ってきてくれました。


理科の難易度と得点調整


 一方で他教科に目を移すとどうでしょうか。


岩手医科の化学がずっと難しいといわれ続けてきましたが、昨年あたりから易化の兆しが見られ、今年はさらに大きく易化したようです。
受験したメルリックスの生徒が、選択肢がすべて四択になっており驚いたと言っていました。
化学の全分野から満遍なく出題され、正確な知識や計算問題が問われて受験生を悩ませてきた岩手医科の化学ですが、ひょっとしたら出題者が変更になったのかもしれません。


理科全体に関していえば、私立医学部では2019年度や2020年度入試ではどちらかと言うと物理が易しく、生物が難しい入試問題が主流の傾向でありました。
昨年度くらいから物理が難しく、生物が標準もしくはやや易という傾向になってきた感があります。特に昨年度の金沢医科はその傾向が顕著でした。
今年度も物理選択で川崎医科、杏林を受けた受験生からは得点調整を期待する声をよく耳にします。


得点調整は昭和のように一切しないと明示している大学と、東京医科のように「原則として20点以上の平均点差が生じ、試験問題の難易度に基づくものと認められる場合には、センター試験の得点調整方法に準じ得点調整を行う」としている大学に分かれます。
私立医学部に毎年アンケートを取っていますが、どちらかというと「大きな差が生じた場合は行う」としている大学が多いようです。


しかし、昨年度の東京医科では生物が難しく物理が易しかったため、受験生の多くから得点調整があるのではという声が挙がりましたが、実際は行われませんでした。
これは医学部に合格するような学力のしっかりした層は、少々の問題難易度でそれほど出来が変動することはないため、受験生全体の平均点で見た時に、明らかに調整するような有意差がつかないことが理由ではないかと思われます。


大学からのメッセージを読み取ること


医学部の入試問題は大学にどのような学生が入ってきて欲しいかというメッセージです。
まず英語はマスト。
そして中堅校以下は生物と物理では若干、生物を有利にしている傾向を感じます。あくまで全体の傾向ですが。


英語はスランプが少ない教科で、生物も考察問題を除けばコツコツ積み重ねていった方が報われる教科です。
逆に数学や物理は総じて当日の脳のコンディションや出題分野によって得点がぶれる傾向があります。
大きく点を稼げることもあれば、ちょっとした計算ミスで大問を丸ごと落としてしまう危険性もある教科です。


どちらかというと中堅校以下の大学は数学、物理が強く頭の切れる受験生より、英語や生物をコツコツ学習できる受験生を取りたいというメッセージを発しているとも取れます。
おそらくは入学後、6年後の国試まで続く勉強の中で生物履修者の方が優秀な成績を修めるという傾向があるのかもしれません。


真に平等な入試を目指すのなら、東海大学医学部や日本大学医学部が取り入れているように素点ではなく、標準化した得点で合否を決める必要があると思います。
これは私見ではありますが、生物と物理の難易度を変えるだけで大学が求める人材を調製できるようになります。
国公立大学医学部では九州大や名市大など物理選択者しか受験できない大学もあります。
ここに一つ医学部入試の特殊性があるように思われます。







佐藤
佐藤
メルリックス学院代表。1971年、愛知県名古屋市生まれ。1995年、名古屋大学法学部法律学科卒。日本生命保険相互会社、中央出版など教育系出版社を経て2018年から現職。2020年に大阪医学部予備校ロゴス、2022年にDDPを吸収合併。著書に『あなただけの医学部合格への道標』(産学社)などがある。

新着記事

他の合格体験記

受験攻略ガイド

カテゴリ一覧