医学部ダブル合格したらどちらに行くか?|東海地区編
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
3月最終週に入ってから、私立医学部の繰り上げ合格・補欠合格がひっきりなしに動いています。大抵の大学は3月31日を辞退手続の締め切り日としています。つまり、その日にはほとんどの大学で入学人員が確定します。4月1日以降も欠員補充のような形で繰り上げが動く大学もありますが、3月31日が一つの大きな区切りとなるのは間違いないでしょう。
さて、繰り上げ合格・補欠合格を待ちながら苦しい思いをしている人がいる一方で、複数の医学部に合格して進学先に迷う人もいるのがこの時期です。私も毎年「◎◎大学と□□大学のどちらに行くのがいいでしょうか?」というご相談を受けます。
昨年までは渋谷校で全国津々浦々からの相談を受けていましたが、今年は情報センターのある東海地方の受験生や保護者の方から「どちらに行けばいいでしょう?」と質問されることが増えました。
私自身も名古屋の出身なのでよくわかるのですが、東海地方の人は「地元志向」が非常に強い傾向があります。また、京都までは新幹線で1時間とかからないのに比べ、東京までは2時間弱かかるため、関東よりも関西の方が物理的・心理的に近いという地域性があります。だからこそ、複数の医学部に合格した場合、東京や大阪の医学部受験生に比べても迷う要素が多いのではないかと思います。
今回は私が実際にご相談を受けた事例をいくつか紹介したいと思います。
国公立医学部か、日本医科大学か?
まず、東海地方の医学部受験生は地元の国公立医学部に合格したら、たとえ日本医科大学から合格通知をもらっていても、多くが地元の国公立に進学するでしょう。将来、地元で医師にとして働くつもりならなおのこと、わざわざ東京の私立医学部に進学するメリットは感じられないと思います。
しかし、少数ではあるものの、敢えて日本医科大学など東京の難関私立医学部を選ぶ方もいらっしゃいます。これには保護者の影響も大きいと感じています。保護者の中には、東京は「人と情報が集まってくる日本の首都」であり、医学部の6年間だけでも東京で過ごすことで、多くの人と出会い視野を広げてほしいということをおっしゃる方もいらっしゃいます。
また、受験生本人がそういったことを考え「新しい世界を見てみたい」という希望から東京の難関私立医学部を選ぶケースもあります。
今年も「地元の国公立医学部か日本医科大学か」で悩んだ生徒がいました。こういったケースでは他に慶應義塾大学、東京慈恵会医科大学、順天堂大学などが進学先の候補として挙げられます。このあたりの私立医学部であれば、研修先は地元の病院にしたいという場合も病院見学の際の移動はあるものの、苦労なくマッチング試験に臨むことができます。旧帝大である名古屋大学に合格すれば話は別ですが、それ以外の国公立医学部であればどちらを選択しても悔いが残ることはないと思います。
地元の私立医学部か? 大阪医科薬科大学か?
メルリックスには私立医学部専願の生徒も多く在籍しているので、私立医学部に複数合格した場合どこに行くかという相談は日常的に交わされています。そうすると、地元の愛知医科大学や藤田医科大学に合格すると同時に、関西の大阪医科薬科大学や関西医科大学にも合格するケースが出てきます。
以前は私立医学部に対して「旧設か新設か」という指標がありました。今もそうですが、戦前にできた大学を旧設、戦後にできた大学を新設と呼び、多くの新設医科大学が昭和47年前後に設立されたという経緯があります。旧設医科大学は歴史があるため同窓生や関連病院の数が多く、医師として働く上で有形無形のメリットがあります。そういったこともあって、偏差値ランキングでは旧設の方が上に来る傾向があります。
ただ、新設医科大学の多くが設立から半世紀が経ち、医学部長や学長に自校出身者が就任することも増え、以前ほど旧設に圧倒的なメリットがあるとは言えなくなってきました。仙台と成田にさらに新しい医学部もできました。
そうすると中には大阪医科薬科大学や関西医科大学に受かっても、地元の愛知医科大学や藤田医科大学を選ぶ生徒も出てきます。また、どちらにしようか迷う生徒も出てきます。
その時に大切なことは「自分が頑張った証明として少しでも偏差値の高い大学に行きたいと思うかどうか」ということです。特に進学校出身の生徒であればあるほど、受験を競争として捉える感覚が強く、偏差値が高い大学に行くことが一種の達成であるという価値観を持っていることが多いのではないでしょうか。
そういう感覚が少しでもあるならば、やはり「偏差値の高い大学に行った方がいいよ」というアドバイスをさせていただきます。特に浪人生であれば「浪人したからには少しでも偏差値の高い大学に行きたい」という気持ちはあるものと思っています。
今年も地元の私立医学部か大阪医科薬科大学かで悩んだ生徒がいました。結果的には親族からの後押しもあり大阪医科薬科大学に進学します。生徒自身も納得した上での選択ではないかと思います。
東京の私立医学部に行くメリットってありますか?
これも名古屋の情報センターに赴任してからよく聞かれるようになりました。東京の私立医学部に行くメリットは東海地方にいるとなかなか感じられないかもしれません。将来、東京で医師として働きたいと思っているならまだしも、地元でいいと思っているのに、そもそも東京の私立医学部を受ける必要がありますか?と言われたこともあります。
合格可能性を上げるということで考えれば、やはり愛知医科大学と藤田医科大学の2校だけでは入試本番で何が起きるかわからないので、他の医学部も併願してほしいと思います。そういった場合によく名前の挙がる首都圏の医学部は、聖マリアンナ医科大学や埼玉医科大学、東海大学といったあたりです。次に昭和大学、日本大学、杏林大学といったところでしょうか。
東京に行くメリットは先ほども述べたように、東京は日本の中心地であり、人も情報も集まってくる場所だということが挙げられるでしょう。東京の生活で視野が広がることにより、自然と将来の選択肢が広がり、知人や友人の活躍から刺激を受けることもあるでしょう。
今年、名古屋校では昭和大学に合格した生徒が2人とも昭和大学に進学します。昭和大学は1年次に全学部そろって富士吉田での寮生活があります。医学部だけでない他の医療系学部の学生とも交流することで多くのことを経験してほしいと思っています。
そこでしか学べないことがあるかどうか
昨年も地元の私立医学部と昭和大学の両方に合格して、昭和大学を選んだ生徒がいました。選んだ理由のひとつに富士吉田での寮生活がありました。やはり「そこでしかできないこと」は大学を選ぶ時の大きな理由のひとつになるのだなと感じました。
学費や立地、歴史と伝統など、いろいろなことをメリット・デメリットとして考えるのはもちろんですが「この大学でしか学べないことがある」と思えば迷わずそこに進学してほしいと思います。
実は名古屋に情報センターが設立されてから気づいたのですが、名古屋市内にある大学受験の塾・予備校はほとんどが名古屋駅に集中しています。名古屋駅にはJRだけでなく地下鉄、そして名鉄、近鉄といった私鉄も乗り入れているため、愛知県内はもちろん岐阜や三重からも通っている生徒がいます。
やはり地元の塾や予備校では学べないことがあるからこそ、わざわざ名古屋まで出てきて勉強しているのだと思っています。浪人生はまだしも高校生で通学している生徒もいます。ガッツがあるなあと思って見ています。その熱意やモチベーションがあるならば、正しい努力をすれば必ず合格できると言っても過言ではありません。
学びたいというモチベーションは何よりの原動力になります。医学部は合格したから終わりではありません。むしろ医師への道はここからがスタートです。
自分が6年間どこで医学を学ぶか。他人の意見や一般論も参考にしつつ、ぜひ自分でも考えてほしいと思います。