2023年度医学部入試概況 第4回 | 入試前半戦からみる合格させられる医学部予備校の特徴
こんにちは。
メルリックス学院代表の佐藤正憲です。
代表室から2023年度の医学部入試についてお届けするブログ。第4回の今日は入試の前半戦を終えての感想を西日本の受験生を中心に書いていきます。
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この時期になると合格発表が出てきて、入試前半戦の流れが決まりだしてくる時期であります。
今年も悲喜こもごも様々なドラマが生まれていますが、戦略的にうまくいったところとそうでないところの差が出てきております。
本当に力を伸ばして医学部に合格させる予備校の力とは何なのか?改めて気づかされたことが多くあります。
今日は西日本の受験生を中心にそのあたりを見ていきたいと思います。
まず、昨年まで一校も合格がない生徒が4浪目の今年、既に岩手医科、川崎医科、杏林と一次合格を果たしてくれました。何が彼女の実績を大きく変えるきっかけになったのでしょうか?
自分の子供と同程度の愛情を教務スタッフが愛情を注げるか
まず、医学部受験生は1年間、メンタルを維持し続けるのが相当、厳しいです。特に親元を離れて一人、寮生活ともなれば尚更です。
教務スタッフが本当の意味で親代わりになって一人一人の生徒に目をかけられて、時には励まし、天狗になっている時には叱咤激励を絶妙なタイミングでできる。非常に大切なことです。
私にも子供がいますがなかなか他人の子供を自分の子供と同じように叱るのは難しいと感じます。しかし医学部予備校というのはその生徒の人生が掛かった場ですのでそんなことは言っていられません。
生徒が落ち込んでいる時、躊躇わずに教務スタッフに声掛けができる環境にあるか?
また、教務スタッフが一人一人の生徒の表情の変化を機敏にキャッチできているか?
非常に大切な要素になってきます。4浪目の彼女の場合は、そのあたりのガス抜きを一年間、上手くしてきたという印象です。
特に大手塾では授業に出なくなっても予備校が気づかなかった、もしくは型通りの連絡をして終わっていたということも無い訳ではないです。今は大手塾でも担任が付いて昔よりは面倒見がずっと良くなりましたが、それでも一人の担任が何十人と生徒を抱えていますのでどうしても限界はあります。
1クラスの人数が適正か 教科ごとのレベル別授業を受けられるか
医学部予備校の大多数の時間を過ごすのはやはり、本科授業になってきます。そこが充実していなければ元も子もありません。
そこを測るベンチマークが1クラスの人数と授業のレベルが本人にあっているかです。
1クラスのレベルは一次合格をもっている生徒ばかりで集めたり、国公立医学部を本気で狙える受験生を集められれば15名程度でも充実したクラス編成ができます。
このレベルになると授業の流れに立ち止まらず、ついてこられます。
ただ、演習の時間に授業の流れを止めずに講師が生徒一人一人の手の動きや理解を机間巡回するには、この学力レベルであってもやはり15名程度までにすべきでしょう。
次に一次合格をまだ持っていない受験生でクラスを構成する場合、人数をもう少し抑える必要が出てきます。講師がそれだけ生徒の理解度を気にかけながら授業を進めなければいけないからです。
しかし、あまり少なすぎると今度は個別授業の方が「効率がいい」ということになって、集団授業の意味がありません。その意味では理想は10名前後までといえましょう。
また、一次合格まで手が届きかけている受験生と、二年計画は必須の受験生が同じ教室で授業を受けることはできません。さらに教科別にクラス分けが可能であることが理想です。
仮に上からハイレベル、スタンダード、ベーシックとすると、現実の受験生は英語はハイレベル、数学はベーシック、理科はスタンダードみたいな凹凸があるケースが非常に多いです。
そのような科目間の凹凸にも対応できているカリキュラムを組んでもらえる予備校が理想といえましょう。
生徒の人数が少ない予備校などは、英語と数学だけクラスが分かれていて理科は合同といったケースもあるようです。また、そういったところは講師の人数も少ないので、たとえ生徒から講師を交替してほしいという声が挙がっても対応してくれない(対応できない)ところも多いようです。
1年の受験勉強の間にはいろいろと予想通りにはいかないことが出てきます。そういう時に柔軟に対応できるかできないかでその予備校の実力がわかると言ってもいいでしょう。
集団授業と個別授業の連携がスムーズに取れる環境にあること
今年のメルリックス生でうまくいってるケースを見てみますと、集団授業と個別授業の特殊性を理解してそれをうまく活用できたケースといえましょう。
集団授業は、同等レベルの受験生と競い合い、刺激を自身に与える。週例の到達度判定テストで自身の仕上がり具合をしっかりと確認する。そのような役割があります。
前年度、個別指導予備校で他の受験生や担任、担当講師と以外交流がなかった受験生の方が今年メルリックス学院名古屋校に来られました。精神的に押しつぶされそうになった時にはけ口がなかったことと、周りからの刺激を受けることが少なく、入試までリズムが掴み切れなかったことが最後まで響いたと言っていました。
その時に彼が発していた言葉は「受験生、孤独になると効率が下がる」とのことです。周囲から適度に受ける刺激は一年を通して上質なスパイスになります。
彼も今年これまで受験した全医学部で1次合格しています。1年経ってようやく真の学力が花開いたと言えます。
あと、大抵の医学部予備校は後期になると演習タームに入ります。
そこで、自分が求めているものと異なったりズレがある場合は、個別授業の割合を増やしたりして調整することが肝要になります。
今年のメルリックス学院大阪校の生徒で、秋まで物理の上昇カーブが緩やかだった受験生が、秋口からほぼ個別に切り替えた結果、春から積み上げてきたものが一気に花開き、医学部受験レベルになったと胸を張って言えるようになりました。
このように、集団授業で積み重ねてきたものが有効に個別指導で強化していった結果、花開いた例もあります。このように集団授業と個別授業への移行(逆も可)がスムーズにとれるシステムを取っている予備校ですと、効率よく受験勉強が進められるといえましょう。
真の受験情報に基づいて受験生に指導をしているか
また、今年のメルリックス学院大阪校の別の生徒でこのようなケースがありました。
マーク模試だと偏差値64程度のスコアを出す、記述模試になると偏差値55程度になる。もちろん、このタイプの受験生には時間をかけて応用的な問題を解かせる医学部を避けて、岩手医科や東北医科薬科、杏林、帝京、北里、独協医科、埼玉医科あたりを勧める予備校が多いでしょう。
関西医科大学の学校推薦型選抜は130分間で70問のマーク形式になります。
この生徒さんの場合は関西医科大学に推薦で無事合格、入学できました。一般選抜ですと、入試問題に記述部分も入ってきますし、受験生のレベルも上がり相当ハードルが上がってしまうのが現状でした。
あと、英語と生物が得意でしたので、それも彼にとっては追い風であると私自身、送り出す時に確信めいたものがありました。
関西医科の推薦は生物の問題が多く生物選択者に有利であること、英語でしっかり点数を取れた方が受かりやすい傾向であることがわかっていたからです。
逆に理科は苦手だけれど英語と数学の標準問題が得意な方でしたら、福岡や久留米、愛知医科といった記述問題と客観式問題が散りばめられていて、学力試験が英語と数学しかない大学を選定したと思います。
また、今年から兵庫医科大学の一般選抜が問題の持ち帰りを認められるようになったことに伴い、問題も標準的なものが多く出されました。昨年までは骨のある記述問題が多く、特に2020年入試の数学は全私立医科大学の中で最も難しいと言われるほどでした。
ところが今年は英語・数学・化学に関しては昨年までより明らかに解きやすい問題が増えました。物理と生物はやはりそれなりに難しかったようですが、これは今後も標準的な問題をメインに出題するという兵庫医科大学の一つの意思の現れであると思います。
今後は標準的な問題であれば太刀打ちできる受験生も積極的にトライして頂ける大学になっていくと思われます。試験時間が今のまま変わらなければ時間的にも厳しくないので、受験生の学力が素直に反映される入試になるのではないでしょうか。
このように偏差値だけで輪切りにするのではなく、形式や教科による生徒の得意、不得意をよく理解して各大学の出題傾向に全て照らし合わせて受験生を導く。これが真の意味で医学部専門予備校がすべき役割と考えます。
偏差値だけで輪切りにする進路指導であれば、大手予備校や自宅浪人と変わりがありません。やはりその部分で専門性を発揮してこそ医学部専門予備校を名乗れると思います。
また、どうしても受験校の選定には地域差が出ます。その予備校から合格者が多い大学ばかりを勧めて、ほとんど合格者のいない大学はよくわからないから勧めないといったこともあるようです。
そういった地域を超えて全国31大学の中から、その生徒がどの大学の入試問題に合っているかを見定めることも我々の役割ではないでしょうか。
次回は、各大学の出題パターンと特徴について触れてみようと思います。