2023年度医学部入試概況 第2回 | 代表室より東と西の入試問題の違い
こんにちは。
メルリックス学院代表の佐藤正憲です。
代表室から2023年度の医学部入試についてお届けするブログ。第2回の今日は東と西の医学部入試問題の形式的な違いについて掘り下げます。
東と西の医学部入試問題の違い
昨年オープンしたメルリックス学院 医学部・歯学部受験情報センターでは、国公立志望の受験生に役立つよう『国公立版医学部受験攻略ガイド』を編集しました。
国公立の入試情報を集めていく中で、鈴村情報センター長との間で話題に上ったのが東と西の入試問題の違いについてであります。
例えば、東の私立医学部で客観式試験を行う大学は、
「岩手医科大学、東邦大学、国際医療福祉大学、東京医科大学、日本大学、杏林大学、東北医科薬科大学、獨協医科大学、自治医科大学、埼玉医科大学……」
とちょっと数えただけでも10校は下りません。
問題数も比較的多く、短い時間で多くの問題を処理させる形式のものが主体であります。
それに比べて、西の私立医学部は、
「関西医科大学、大阪医科薬科大学、兵庫医科大学、近畿大学、藤田医科大学、愛知医科大学、福岡大学、久留米大学、産業医科大学」
と金沢医科大学と川崎医科大学を除くすべての私立医学部で記述主体、もしくは客観、記述混合型になっています。
なぜ入試問題の傾向が違うのか?
ここに関しては長年、『私立医歯学部受験攻略ガイド』の編集に携わってきた観点で鈴村情報センター長と議論しました。
関東地区、東北地区の大学は受験者数が多いのと採点効率を重視する観点で、客観式問題が多いと思われます。
一次試験の実施から合格発表までもなるべく短くすることで早め早めに合格を出し、受験生を囲い込むスケジュールになっています。
内容も標準的なものをスピーディーにこなす内容になっています。そういう試験形式で受験生間の差をつけているとも言えます。
一方、西日本の大学は多くが記述主体かもしくは客観式と混合型で思考力、論理力を測る内容になっております。
私自身、大阪校や名古屋校の生徒達と日々話をしていて思うことは、西日本は各県(地区)に国公立大学が存在しているため、医学部受験生も常に国公立大を意識しています。
そして、国公立が叶わなかった受験生が私立を考えるという構図がはっきりしております。
試験問題も必然的に国公立に照準を合わせている受験生にその延長線上で受験できるような配慮がなされていると考えられます。
これは東日本でも同じで、東京大学理科三類との併願者が多い慶應義塾大学はもちろん、東京慈恵会医科大学、日本医科大学、順天堂大学といった国公立志望者が多く受験する大学は記述主体の試験問題であります。
そういった一部の上位校を除けば、東日本(特に首都圏)に関してそもそも医学部受験は私立がメインとなっています。
首都圏に関しては私立医学部と国公立医学部はそもそも別世界の概念が出来上がっています。
首都圏の国公立医学部といえば東京大学、東京工業大学との合併が発表された東京医科歯科大学、横浜市立大学、千葉大学の4校しかありません。
ちょっと離れて北関東の群馬大学、筑波大学、そして山梨大学になります。
よって東日本の私立医学部の問題作成委員の先生方は「地区の国公立の入試問題を意識することなく、独自の観点で入試問題を作成できる」という面が大きいと思われます。
つまり、目の前の(私立メインの)受験生を見て問題を作る傾向が強いと思われるのです。
首都圏の多くの医学部受験生は中学受験(あるいは幼稚園受験、小学校受験)を経験しており、小さい頃から星の数ほどある塾や予備校に通っています。
中高一貫校で先取り学習をしており、高校3年の夏までにほとんどの受験範囲を終えるような受験生達。
彼らがどんな問題に強く、どんな問題の傾向に弱いのか。そういった観点で問題を作成していると考えられるのです。
近畿や兵医は受かりにくく、福大・久留米は易しいのか?
また、これは今後情報センターでさらに研究を進めてまいりますが、西日本の私立医学部は入試問題の形式や傾向だけでなく、学校推薦型選抜や総合型選抜などの入試方式も国公立を意識しているというのが鈴村情報センター長の分析です。
例えば一時期、大阪大学や神戸大学で一風変わった名称の推薦入試が行われていました。
いわゆる総合型選抜・学校推薦型選抜の一形態になりますが、私立の大阪医科薬科大学も総合型選抜で「至誠仁術」入試を行っています。
また、京都大学は「高大接続型」特色入試を行っており、TOEFLiBTのスコアや国際科学オリンピック世界大会出場経験、国際バカロレア資格などが評価されます。
関西医科大学も同じように英語型・国際型・科学型の特色選抜試験を実施しています。
このように西日本、特に関西の私立医学部は常に国公立を意識して自分達の入試をどうするか考えていると言っても過言ではないと思われます。
また、西日本の私立医学部の中で総合大学が3つあります。
近畿大学、福岡大学、そして久留米大学です。
近畿大学は以前一般後期のみ他学部共通問題を使用していましたが、医学部の合格最低点が高すぎるということで、一般前期と同じ医学部独自問題を使用するようになりました。
しかし、福岡大学と久留米大学は一部、他学部との共通問題があるなど、完全に医学部だけが独立した出題にはなっていません。
結果的に医学部入試の中では「攻略しやすい」「組しやすい」入試問題の難易度となっています。
このあたりが、東日本の受験生が西日本の私立医学部を受ける時に、「近畿大学や兵庫医科大学はどうも難しいが、福岡大学や久留米大学は比較的易しい」と感じて選ぶ要因の一つになっていると思われます。
偏差値的な難易度でいうと、近畿大学や兵庫医科大学はそこまでの超難関校というわけではありません。
しかしこの2校はいずれも問題に特徴があり、特に西日本の医学部受験生は国公立と合わせて対策してきますので、いきなり東日本の受験生が受けてもなかなか受かりにくいといった面があるのでしょう。
こういったあたりも、「なんとなくそうだから」と経験則でアドバイスをするのではなく、こういう理由でこういう結果が出ているから、君に合う受験校はここだよと根拠をもって進路指導できるようになることが大切です。
すべての教職員がそうできるようになってこそ、渋谷校・名古屋校・大阪校の3校舎が真に連携していくことのメリットだと考えています。