
医学部推薦は「偏差値」で選ぶな|大学別の特徴と受験戦略【2027】
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
この記事では年ごとに複雑化・多様化していく私立医学部の学校推薦型選抜・総合型選抜(以下「推薦・総合型」)を5つのパターンに分類していきます。なかなかわかりにくい私立医学部の年内入試を整理することで、医学部受験生が受験校を選ぶ時の参考にしていただければ幸いです。
※こちらは2026年5月8日時点の情報になります。大学のホームページや募集要項で最新の情報を確認してください。
目次[非表示]
私立医学部の推薦・総合型のトレンドとは
まずは、文部科学省が推進する「入学者選抜の多様化」に従って、私立医学部に限らず大学全体で推薦・総合型の募集人員が増え、その代わりに一般選抜の募集人員は減少傾向にあることは、これまでにも様々なニュースで報じられてきました。
さらに、文部科学省による「2/1以降ルール」の厳格化により、私立医学部一般選抜の入試日程の過密化が進んでいます。2026年度は1月に一次試験を実施する私立医学部が「31校中9校」まで減少しましたが、2027年度はさらに少なくなると思われます。
そのため、私立医学部をメインで考えている受験生は一般選抜で併願できる大学が減ると考えて、以下の2点がポイントになります。
|
とはいえ、推薦・総合型といえば、「高い評定平均が必要」「現役か、受けられても1浪まで」「合格したら辞退できない」という先入観がある受験生も多いと思います。そこで、この記事ではそのあたりも含めて分類していきたいと思います。
私立医学部の推薦・総合型は5つに分けられる
まず、私立医学部の学校推薦型選抜・総合型選抜は5つのカテゴリに分類できます。
|
そして、このように複数のカテゴリがあることが、一般選抜のような「偏差値ランキング」「入試難易度ランキング」といった「1つの基準」によるランク付けが難しい理由でもあります。同じ基準で比較するのが難しいからです。
とはいえ、大学の「偏差値ランキング」はある意味で「人気ランキング」の側面もあるため、それを推薦・総合型にも適用して、一般選抜の難易度≒推薦・総合型の難易度と考えて、多くの医学部受験生はどこを受けるか決めているのではないかと思います。
しかし、せっかく大学によってさまざまな入試形態がある推薦・総合型を、自分に合う/合わないではなく、偏差値ランキングをもとに決めてしまうのはあまりにもったいない。
そこで、この記事では推薦・総合型を行っている私立医学部25校を5つのグループに分けることによって、大学ごとの特色を偏差値とは違う基準で説明していければと思います。
|
この25校を分類していきます。
1.のびしろ型(非・一般選抜型)
医学部は出口として卒業時に「医師国家試験」があるので、推薦・総合型であっても「学力試験またはそれに類するもの」が必ずと言っていいほど課されます。他学部と違い「小論文と面接だけで合格する入試」はありません。
(一部の付属校推薦では学力試験が課されないこともありますが、その場合は熾烈な学内選抜を勝ち抜く必要があります)
しかし、いわゆる受験科目(英語・数学・理科2科目)とは異なる問題で受験生を選抜する大学があります。それが東京女子医科大学と東邦大学です。
大学 | 試験科目 | タイプ |
東京女子医科大学|推薦・総合型 | 思考力試験 | 理系寄り |
東邦大学|推薦・総合型 | 適性試験・基礎学力 | 文系寄り |
この2校で課される試験はどちらも英語や数学といった受験科目に分類することができません。
どちらかと言うと、東京女子医科大学で出題される思考力試験は確率や図形など理系寄り、東邦大学で出題される適性試験・基礎学力は文章題やデータの要約など文系寄りですが、まさに医学部受験生ののびしろを計る「のびしろ入試」と言えるでしょう
また、この2校に共通するのが、「個人面接」だけでなく「グループ討論」も加えて課すことです。東京女子医科大学の2027年度から始まる総合型は「個人面接」のみのようですが、東邦大学は「グループ討論」に加えて「MMI(マルチプル・ミニ・インタビュー)」が行われます。
東京女子医科大学も2026年度の一般選抜で「MMI」が課されましたので、今後は推薦・総合型でも行われる可能性が考えられます。
つまり、このような「非・一般選抜型」の「のびしろ入試」は、必ず面接でコミュニケーション能力があるかどうかをしっかり見られるということが言えます。
このあたりが「のびしろ型」は人を選ぶ、つまり対策が難しいゆえんでしょう。学力偏重ではないというところが、最も“推薦・総合型らしい入試”と言えるかもしれません。
2.学力重視型(一般選抜型)
逆に学力重視型(一般選抜型)と言ってもいい私立医学部も挙げておきましょう。
もちろん、1の「のびしろ型」を除けば、私立医学部の推薦・総合型ではどのような形にしろ必ず学力試験が課されますが、メルリックス学院で行う推薦対策講座の中でも「プレテストの得点と合格者との相関」が強い大学と弱い大学があります。
これはどういうことかと言うと、「予想問題プレテスト」の学力試験の得点と実際の合否に強い相関がある場合は、小論文・面接の配点が低い、または小論文・面接では特別なことを要求していないと考えられます。
残念ながら、私立医学部の推薦・総合型は配点非公表の大学が多いのですが、このようにプレテストでしっかり得点できていれば実際の入試でも合格する確率が高い大学は、合格ラインが「読みやすい」と言えます。
こういった「学力重視型」の代表として、東日本では帝京大学推薦、西日本では近畿大学推薦が挙げておきます。
大学 | 現浪 | 評定平均 |
帝京大学|推薦 | 現役のみ | 4.0以上 |
近畿大学|推薦 | 1浪まで | なし |
ちなみに、この2校は推薦の合格最低点も毎年公表されており、推薦であってもいわゆる「点数勝負」の側面が強い大学であることがわかります。
試験科目も英語・数学・理科1科目と似ています。数学の出題範囲が(一般選抜も含めて)数Ⅰ・A・Ⅱ・B・Cであることも同じです。
ただ、この2校の推薦で明確に違う点が2つあります。
まず、出願資格です。帝京大学の推薦は現役のみ、評定平均も4.0以上が必要なのに対し、近畿大学の推薦は1浪までなら評定平均に関係なく受けられます。
さらに、帝京大学の推薦は専願ですが、近畿大学の推薦は併願です。つまり帝京大学の推薦は合格すれば進学することが基本ですが、近畿大学の推薦は合格しても翌年の3月31日までなら入学辞退することができます。
そのため、近畿大学の推薦は西日本の受験生を中心に「国公立医学部や難関私立医学部の押さえ校」として、毎年多くの受験生が受験します。参考までに、2026年度の志願者数は746人でした。対照的に、帝京大学の推薦志願者数は60人台で推移しています。
当然ながら、難易度を単純に比較すれば、近畿大学>帝京大学です。ここまで倍率と受験者層が違えば、その差は明白と言っていいでしょう。
3.基本問題型(英数)
さて、推薦で出題される入試問題の大きな特徴は「現役生に合わせて作られている」ということです。(総合型選抜は10月に実施されるため、学力は共通テスト利用で計られることが多い)
総合型選抜は10月1日から、学校推薦型選抜は11月1日からの実施が認められていますので、原則として、その時点で高校のカリキュラムで修了しているところまでを出題範囲としなければなりません。
ここで言う高校のカリキュラムとは、私立中高一貫校に多い先取り学習ではなく、文部科学省が告示している学習指導要領に基づいた進度です。そのため、推薦・総合型の出題範囲を公表している大学の多くは、数Ⅲを出題範囲から除外しています。(ふじた未来入試、福岡大学推薦など、一部の大学では推薦・総合型でも数Ⅲから出題されます)
また、10月から11月にかけての日程で、現役生と浪人生が同じ試験を受けた場合、浪人生には受験勉強に対する1年のアドバンテージがあります。対照的に、現役生は高校生活と受験勉強を両立しており、高校によってはまだ全範囲の課程が終わっていないこともあります。
よって、私立医学部の多くは推薦で出題するのは「基本的なレベル」の問題であることが多く、一般選抜の問題とは難易度が異なります。
今年に入って、文部科学省の指導により、推薦・総合型も過去問を公開する大学が増えてきましたが、過去問が公開されていない大学を受けようと思った時に、多くの方は一般選抜の過去問を手に取るのではないかと思います。
もちろん、それも間違いではないですが、出題範囲はもとより記述式かマーク式か、難易度なども異なることが多いため、そのまま過去問が推薦対策に使える大学とそうではない大学があります。
さらに、現役生は理科が間に合わないという人も多いと思いますが、私立医学部の推薦で理科を課さずに英語・数学のみを試験科目としている大学は意外に多くあります。これも理科が含まれた場合、現役生と比べて浪人生が有利になるケースが多いためと考えられます。
大学としては現役生を優遇する、浪人生を差別するという意図ではなく、「同じ土俵の上で公平に勝負する」ための土台として、推薦の試験科目や出題範囲を決めていると言えるでしょう。
推薦・総合型の学力試験が英語・数学のみの私立医学部は以下の7校です。東日本3校、西日本4校と西日本の方が多く、過去問も西日本の4校はすべて公開しているのも特徴です。
日本大学医学部は公募推薦と地域枠推薦で試験科目が異なる年度もありましたが、現在は英語・数学の2教科で統一されています。
大学 | 現浪 | 評定平均 | 過去問 |
自治医科大学|推薦・総合型 | 1浪まで | 4.0以上 | × |
獨協医科大学|推薦 | 現役のみ | 枠により異なる | × |
日本大学|推薦 | 1浪まで | 4.0以上 | × |
愛知医科大学|推薦 | 1浪まで | 3.7以上 | ○ |
藤田医科大学|総合型(ふじた未来入試) | 現役のみ | なし | ○ |
久留米大学|推薦 | 2浪まで | なし | ○ |
福岡大学|推薦 | 1浪まで | 3.7以上 | ○ |
※評定平均は総合値の他に、科目ごとの基準が設けられている大学もあります。
これらの大学は学力試験の対策ももちろんですが、面接や小論文も特徴的な出題が多いため、その大学ごとの特徴をとらえた対策が必要です。
大学が「入学させたい人材」を推薦・総合型に濃く反映させていると言ってもいいでしょう。
このカテゴリの大学は、推薦・総合型では必要最低限の学力プラス、入学させたい人材を小論文と面接で見極めて合格させたいと考えているように思われます。学力試験に自信のある受験生は一般選抜や共テ利用でどうぞ、というところでしょうか。
そのあたりを高校の先生も見極めた上で、推薦書を出しているところが多いようです。
4.基本問題型(英数理)
さて、当然ながら推薦で理科を課す大学もあります。基本的な問題が出題されるのは、3の英数型と変わりませんが、理科2科目ないしは3科目が必要です。また、変則的な科目を課す大学もあるので注意が必要です。
変則的な科目を出題する大学は、敢えてそのための対策をするよりも、普段の受験勉強の延長線上で思考力を要する問題を出しており、一種の「のびしろ型」と言えます。東京医科大学や関西医科大学がそれに当てはまります。
英語・数学の他に理科2科目が必要な大学
大学 | 現浪 | 評定平均 | 過去問 |
岩手医科大学|推薦・総合型 | 枠により異なる | 枠により異なる | ○ |
東北医科薬科大学|総合型 | 5浪まで | 3.8以上 | △ |
埼玉医科大学|推薦 | 1浪まで | 4.0以上 | × |
昭和医科大学|推薦 | 現役のみ | 4.3以上 | ○ |
北里大学|推薦(指定校のみ) | 現役のみ | 高校に通知 | × |
聖マリアンナ医科大学|推薦 | 現役のみ | 3.8以上 | ○ |
金沢医科大学|推薦・総合型 | 総合型は25歳以下 | 総合型はなし | ○ |
兵庫医科大学|推薦・総合型 | 枠により異なる | 4.0以上 | ○ |
川崎医科大学|総合型 | 4浪まで | なし | × |
英語・数学の他に変則的な科目を課す大学
大学 | 現浪 | 評定平均 | 過去問 |
東京医科大学|推薦 | 1浪まで | 4.0以上 | ○ |
大阪医科薬科大学|推薦 | 現役のみ | 4.0以上 | ○ |
関西医科大学|推薦 | 1浪まで | 枠により異なる | ○ |
兵庫医科大学|総合型 | 1浪まで | なし | ○ |
産業医科大学|推薦 | 1浪まで | 4.3以上 | ○ |
関西医科大学の推薦は適性能力試験という英語・数学・国語・理科などの総合問題が出題されます。物理・化学・生物の知識が必要ですが、今年初めて過去問が大学のホームページで公開されました。
逆に科目数が少ない大学もあります。
大阪医科薬科大学の推薦は出願時に英語資格・スコア(ほぼCEFR B1以上)が必要なため、学力試験は数学と理科2科目です。英語は出題されません。
兵庫医科大学の総合型は英語と理科2科目が出題され、数学的資質は二次試験のプレゼンテーション試験で計られます。ただし、同じ総合型でも2026年度から始まったエキスパート養成入試は、推薦と同じく英語・数学・理科2科目が課されるので注意が必要です。
産業医科大学の推薦は総合問題として、英語と数理的問題が出題されます。年によって異なりますが、数学や理科の知識が必要です。
5.共テ利用型
最後に共テ利用型の大学を紹介しておきましょう。国公立医学部医学科の多くが採用する入試形式ですが、私立医学部の総合型で共テ利用を出題する大学はそれほど多くありません。
大学 | 現浪 | 評定平均 | 共テ |
帝京大学|総合型 | 1浪まで | なし | 英・数・理2 |
東海大学|総合型(希望の星育成) | 現役のみ | なし | 英・数・理2 |
大阪医科薬科大学|総合型(至誠仁術入試) | 1浪まで | なし | 英・数・理2・国(現) |
産業医科大学|総合型 | 1浪まで | 2浪まで | 英・数・理2 |
この共テ利用型の総合型選抜は、小論文やグループディスカッションなど大学独自の試験と共通テストの得点を合わせて合否を判定します。
帝京大学、東海大学、産業医科大学は大学独自の試験で合格した人だけが共通テスト利用に進めますが、大阪医科薬科大学は共通テストで概ね80%以上を得点できた人だけが、3月半ばに行われる大学独自の試験に進めます。
この共通テスト80%以上という得点率は、産業医科大学の総合型の最終合格基準でもあります。
また、産業医科大学の総合型は専願制ですが、他の3校はすべて併願制で合格しても入学辞退できます。
ただし、大阪医科薬科大学の「至誠仁術」入試は、他の国公立医学部や私立医学部に合格していても、「大医に行きたい」という受験生のためのラストチャンスと考えていいと思います。
帝京大学、東海大学の総合型は、他の私立医学部の推薦や一般も受けながら、最後に合格した中から進学先を決める受験生が多い印象です。専願制の推薦で合格すれば、年内にそちらに進学することを決める受験生も一定数います。
現実と理想という2つの面から選ぶ自分に合った医学部
さて、ここまで私立医学部の推薦・総合型をざっと5つのカテゴリに分類しましたが、自分がどのカテゴリで有利になるかといったことを漠然とでもいいのでイメージできれば、後はオープンキャンパスや進学相談会でその大学の雰囲気や校風を感じてみましょう。
特に推薦・総合型は「大学が欲しい人材」がより明確な入試になるため、校風と合うかどうかは非常に重要です。併願制の大学を含めても、推薦・総合型に出願できる大学は多くて2校~3校といったところでしょう。専願制であれば1校しか受験できません。
自分が合格しやすそうな大学という現実的な側面と、自分に合った雰囲気の大学(=自分が行きたい大学)という理想的な側面の両方から受験校を考えてほしいと思います。
昨年度までの形式を参考に、私立医学部の推薦・総合型の難易度チャートを作成してみました。
右に行くほど科目数が多く、上に行くほど難易度が高いチャートとなっています。参考にしていただければ幸いです。






