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【第16回歯科プレスセミナー】に参加しました

こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。

日本私立歯科大学協会が開催する【第16回歯科プレスセミナー「知らないと危険!口腔細菌が全身にもたらす影響とは?」】に参加してきました。

メルリックス学院は日本私立歯科大学協会の賛助会員であり、毎年開催している【全国歯学部合同説明会】にもご協賛いただいています。

※当日の資料は日本私立歯科大学協会のホームページからダウンロードできます。

目次[非表示]

  1. 1.第16回のテーマは「口腔細菌と全身疾患の関係」
  2. 2.歯周病と全身疾患の関係、さらにその先へ
  3. 3.訪問歯科診療の現在から世界的な研究まで

第16回のテーマは「口腔細菌と全身疾患の関係」

第16回目の開催となる今回の歯科プレスセミナーは「口腔細菌と全身疾患の関係」がテーマでした。最初に日本私立歯科大学協会の会長であり日本歯科大学生命歯学部教授の羽村章先生によるご挨拶から始まり、次に日本私立歯科大学協会副会長であり神奈川歯科大学の櫻井孝学長による「歯科医師の現状~歯科医師へのニーズの高まり~」の講演がありました。

櫻井学長の講演は歯科医療の現状を的確に要約されており、いつも大変わかりやすいです。今回も以下のような話をスライド資料を基にお話しされました。

1.2022年度の歯科医師数は約10万5千人。年々増加してきたが、2020年をピークに減少に転じる。

2.日本の歯科医師数はOECD加盟38国の中で19位と、世界的に見ると過剰ではない。(ちなみに1位はリトアニア)

3.開業歯科医の46.8%が60歳以上、77.1%が50歳以上で、9割は継承が決まらない。

4.「コンビニより多い」と言われた歯科診療所は約6万6千施設。2017年のピーク時から8年で3千施設以上の減少。

5.歯科医師のいない地区が全国に約1,250もあり、地方の歯科医師不足は喫緊の課題。

6.歯科医師の求人倍率は13倍以上、職業別年収ランキングでは約1,136万円で、航空機操縦士、医師に次ぐ第3位。

歯科医師が減少傾向にあり、歯科訪問診療のニーズが増している中で、特に地域の歯科医師不足は大変深刻というお話でした。メルリックス学院に在籍している地方出身の歯学部受験生から「近隣にある歯科クリニックは、うちともう一軒しかない」といった聞くことがあるので、実感としてもその通りだと思いました。

歯周病と全身疾患の関係、さらにその先へ

さて、今回の歯科プレスセミナーの基調講演は日本歯科大学生命歯学部の沼部幸博教授による「口腔細菌と全身疾患の関係から考える歯科医療の未来」でした。

歯周病と全身疾患が関連していることは広く知られていますが、今年の3月まで日本歯周病学会の理事長だった沼部先生は歯周病研究の第一人者でもいらっしゃいます。今回は歯周病になるメカニズムと、なぜ歯周病が全身疾患のリスクになるかを、スライドを使いながらわかりやすく説明してくださいました。

歯周病と関係があるとされる全身疾患は、糖尿病や虚血性心疾患・脳血管疾患などの血管障害、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎など多岐にわたります。特に国民病ともいわれる糖尿病と歯周病は大きく関係しており、歯周治療で血糖値が低下するという研究結果は大変興味深いものでした。

また、腸内細菌叢や口腔細菌叢を治療のターゲットとして利用・調整する新しい医療アプローチである「マイクロバイオーム標的療法」が確立されれば、これまで薬物療法や外科療法しかなかった消化器疾患や糖尿病などの代謝疾患、免疫・アレルギー疾患、うつ病なども予防・治療できるという話は将来的に非常に希望が持てました。

いずれは患者さんごとのマイクロバイオーム(微生物の集団全体とその遺伝情報)を解析・標的療法を利用することで個別の歯周治療が可能になるということでした。ただし、それには莫大な費用がかかるとのことで、実現化はもう少し先のことになりそうです。

訪問歯科診療の現在から世界的な研究まで

最後は松本歯科大学の宇田川信之学長がコーディネーターを務めるパネルディスカッションでした。パネリストに羽村章先生、花形歯科医院院長の花形哲夫先生、昭和医科大学の塚崎雅之教授を迎えて歯科医師・医療者が語る「口腔から考える全身の健康」がテーマでした。

羽村先生からは以下のような話がありました。

1.歯科医学は命を守る医療であること

2.歯科医師は0歳から100歳まで患者さんを一生涯にわたって診ることができること

3.中国の古い格言に「上医はいまだ病まざるものの病を治し、中医は病まんとするものの病を治し、下医はすでに病みたる病を治す」とあるが、歯科医師は上医であり医師の本分と言えること

花形先生は山梨県甲府市で歯科医院を開業されている歯科医師であり、歯科訪問診療の現場も知り尽くしていらっしゃるので、話に臨場感がありました。高齢者への口腔ケアもただ指導するだけでなく、後できちんとできているかチェックしなければ意味がないといった話は臨床の現場にいる方ならではのものでした。また、歯科訪問診療におけるICTの活用や多職種連携の話も勉強になりました。

口腔生化学講座の教授である塚崎先生は口腔がんの研究がご専門であり、口腔内の骨膜が腫瘍を閉じ込めるような動きをすることを世界で初めて発見されたそうです。これは免疫以外の仕組みががんをブロックする世界初の研究であり、今後臨床での実用化が期待されるとのことです。

最後の質疑応答で思いきって塚崎先生に「なぜ基礎研究の研究者になられたのですか?」とうかがったところ、大学2年の時に聞いた宇田川学長の師匠でもある須田立雄先生の特別講義に感動して、研究の世界に身を投じようと思われたそうです。歯学部の基礎研究は歯科医師免許を持った上でサイエンスができる分野であり、口腔領域からバイオロジーに関われるのが大きな利点だとおっしゃっていました。

歯学部入試の面接指導も担当する私にとって、歯科医療の現状と最前線を知っておくことは必要不可欠でもあります。より知見が深まった今回の「第16回歯科プレスセミナー」でした。

鈴村倫衣
鈴村倫衣
メルリックス学院医学部・歯学部受験情報センター長。四半世紀以上にわたって医学部・歯学部の受験指導、面接指導に携わり、多くの生徒を合格に導いてきた。医学部・歯学部入試に関する造詣は深く、大学から入試改革のアドバイスを求められることもしばしば。また、多くの生徒に接してきた経験を活かして、大学のFD研修に登壇するなど、高校のみならず大学でも多くの講演を行っている。

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