医学部受験のために英検を取るべきか?
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
今日は医学部受験をする上で、英語技能検定試験(英検)を取るべきかどうか、もし取ったとしたら、どのぐらい有利になるかをお話しします。
(トップの画像は英語検定協会のHPからお借りしました)
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英検を取得するメリットは3つある
大学受験において、英検を取得していることで得られるメリットは3つのパターンがあります。
1.出願条件
2.加点方式
3.得点換算
1の出願条件というのは、英語の資格を持っている受験生だけが出願できる入試があるということです。
例えば、中央大学法学部は総合型選抜で<英語運用能力特別入試>を実施しており、英検準1級以上を持っていれば出願することができます。
2の加点方式というのは、英検のスコアに応じて学力試験の点数に加点されるシステムのことです。
早稲田大学の国際教養学部は出願時に英語4技能テストの結果を提出し、最大20点まで加点されます。
3の得点換算というのは、英語4技能テストのスコアを得点換算して判定する入試のことです。
明治大学経営学部経営学科は一般の英語4技能活用入試で、英語の配点を30点とし、英語資格のスコアに応じて得点換算しています。
私立医学部入試への導入
このように、英語4技能テストのスコアを入試に導入している大学は多くありますが、医学部は岡山大学で英検1級を持っていれば共通テストと個別試験を満点換算するなど、国公立医学部は主に英検準1級(B2レベル)以上で得点換算する大学が主流です。
対照的に私立医学部ではこれまであまり積極的に導入されてきませんでした。例えば、帝京大学医学部は学校推薦型選抜で「優遇措置」を取る、東京慈恵会医科大学は「二次試験の参考にする」という曖昧な表現にとどまっています。
福岡大学医学部は共通テスト利用選抜において、一次試験の英語(リーディング・リスニング)の得点に英語4技能テストのスコアを満たす場合は加点するとしています。
英検2級を持っていれば20点、英検準1級・1級を持っていれば40点が加点されます。
私立医学部で英語4技能テストのスコアがあまり利用されてこなかったのは、他の学部と異なり、医学部は大学が作成した独自の学力試験で合否を判定しようとする傾向が強いためと思われます。卒業時に医師国家試験を受験するため、自分たちの作った独自試験で「6年間ストレートで国試に合格しそうな学生」を選抜したいとする傾向があります。
ところが最近になって、入試に英検を始めとする英語4技能テストを活用する私立医学部が増え始めました。
以前は医学部受験生に「英検を取得した方がいいですか?」と聞かれても「無理のない範囲で取得するといいですよ」とアドバイスしていましたが、最近は「高2までに2級、英語が得意であれば準1級を目指してください」とお伝えしています。
2025年度入試現在、英語4技能テストを活用している私立医学部入試は以下の通りです。
出願条件
埼玉医科大学の特別枠推薦(英検1級)や、関西医科大学の特色選抜(英検準1級以上)、兵庫医科大学の一般B(英検2級以上)など、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)で一定以上のスコアを持っている人のみが出願できる入試があります。
さらに近年、日本医科大学のグローバル特別選抜や2025年度から始まる東邦大学の統一入試など、英語の検定資格やスコアを出願の条件とする入試が増加傾向にあります。
特に東邦大学医学部が日程的に後期入試と言える統一入試を行う影響は大きく、募集人員が約3名とはいえ、初年度の今年は200人~300人ほどの志願者を集めるのではないかと予想しています。
ただ、それまでにどこかの医学部に合格した受験生は受験しないでしょうから、学力上位層の欠席はそれなりに多いと思われます。
英検を取得していると受験可能な私立医学部入試
大学 |
入試区分 |
実用英語技能検定 |
期限 |
---|---|---|---|
埼玉医科大学 |
推薦(特別枠)英語型 |
1 級 |
なし |
順天堂大学 |
一般B |
英検1980以上
(2級相当)
|
2年以内 |
東京医科大学 |
英語検定試験利用推薦 |
CEFR B1以上
(2級相当)
|
2年以内 |
東邦大学 |
統一入試 |
2級 |
2年以内 |
日本医科大学 |
グローバル特別選抜 |
準1級 |
2年以内 |
関西医科大学 |
特色選抜(英語型) |
CSEスコア2300以上
(準1級相当)
|
2年以内 |
兵庫医科大学 |
一般B(高大接続型) |
2級 |
2年以内 |
※英検の他にも利用可能な英語資格・検定試験があります。詳しくは各大学のHPをご覧ください。
加点方式
英語4技能テストの資格・スコアを出願資格に課している入試の中で、その資格・スコアに応じて加点する入試区分があります。順天堂大学医学部の一般Bがそうですが、2025年度入試から東京医科大学の英語検定試験利用推薦も加わりました。
また、兵庫医科大学の一般Bは二次試験の「課題型面接・個人面接」「英語資格検定試験・調査書」に80点の配点があります。
英検のスコアに応じて加点する私立医学部入試
大学 |
入試区分 |
加点 |
期限 |
---|---|---|---|
順天堂大学 |
一般B |
1980-2124:5点
2125-2299:10点
(2級相当)
2300-2449:15点
2450-2599:20点
(準1級相当)
2600以上:25点
(1級相当)
|
2年以内 |
東京医科大学 |
英語検定試験利用推薦 |
CEFR B1:6点
(2級相当)
CEFR B2:18点
(準1級相当)
CEFR C1-C2:24点
(1級相当)
|
2年以内 |
福岡大学 |
共通テスト利用 |
2級:20点
準1級・1級:40点
|
2022年4月以降に取得 |
※英検の他にも利用可能な英語資格・検定試験があります。詳しくは各大学のHPをご覧ください。
わかりやすくするために、CEFRレベルと英検のスコアが何級に相当するかを注としてカッコ書きで入れました。
例えば、私は英検2級を持っており、スコアは2193です。これはCEFR B1レベルとなり、順天堂大学一般Bであれば10点、東京医科大学の英語検定試験利用推薦であれば6点が加点されます。
得点換算
私立医学部入試には今のところ、英語4技能テストを得点換算する(英語の試験を受けなくてもいい)入試区分はありません。
私立歯学部では大阪歯科大学が学校推薦型選抜と一般選抜で、学力試験における「外国語(英語)」について、「受験する」または「受験免除」のいずれかを選択することができます。学力試験を受験する場合は、受験得点と、換算得点のいずれか高得点を、受験生の得点として合否判定します。
例えば、CEFR B1レベルを持っていれば受験生の平均点、CEFR B2レベル以上は受験生の平均点+10点に得点換算されます。
国際バカロレア選抜
最後に、英語4技能テストとは直接関係ありませんが、例外的に国際バカロレア選抜についても触れておきましょう。
これまで国際バカロレア選抜(IB入試)といえば、東京医科歯科大学や筑波大学など、国公立医学部入試で行われており、私立医学部入試では順天堂大学と愛知医科大学のみが実施していました。
ところが、2025年度入試から藤田医科大学、そして兵庫医科大学で相次いで行われることになりました。藤田医科大学の国際バカロレア選抜は併願可能であり、国公立大学医学部医学科の国際バカロレア選抜に合格した場合のみ、入学辞退が認められます。
いずれも若干名での募集であり、募集人員が今後、急激に増えることは考えられませんが、入試の多様化という意味では、私立医学部にもじわじわと広がっていくかもしれません。