
【確定】2026年度の私立医学部入試日程表が完成
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
私立医学部の2026年度入試日程表が完成しました。今年は文部科学省による<2/1以降ルール>の順守通達の影響で、1月に一次試験を行う私立医学部が減少し、2月上旬に多くの一次試験が集まっています。これまでの前例が通用しなくなる2026年度の私立医学部一般選抜がどうなるかを見ていきましょう。
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1月に一次試験を行う私立医学部はわずかに9校
2026年度の私立医学部入試は大きく変わります。2025年度は私立医学部31校のうち、1月に一次試験を行う大学が14校ありました。それが2026年度では9校に減少しました。
なぜ、2026年度入試では、1月に一次試験を行う私立医学部が減ったのでしょうか?
事の発端は、医学部とは関係のない東洋大学が2025年度に基礎学力テスト型の年内入試を行ったことに始まります。東洋大学の年内入試は、総合型選抜や学校推薦型選抜によくある「志望理由書」「小論文」「面接」といった準備に時間のかかる試験科目ではなく、基礎学力テストのみを課すというシンプルな形式であることが受験生の耳目を集めました。
さらに、併願可能としたことで、主に首都圏の私立大学を志望している受験生が、出願書類や小論文・面接の準備に時間を取られることなく、学力テストのみで年内に進学先を確保できることになりました。その結果、14学部で2万人近い志願者(19,411人)を集めることになりました。
今後ますます少子化が進む中で、大学は学生の確保に懸命になっています。この東洋大学の志願者激増により、他大学でも追随する動きが出てきたため、文部科学省は2024年12月、即座に全国の大学に指導通達を出しました。
大学による学力試験の実施は、原則として2/1以降となっていること
学力試験を伴う入試の年内実施はルールを逸脱していること
いわゆる「2/1以降ルール」を順守するように全国の大学に通達したのです。
補助金の交付も暗に含めたこの通達は、私立医学部入試にも大きな影響を及ぼしました。2026年度入試で1月に一次試験を行う私立医学部が減少したのはそのためです。
2025年度は1月に一次試験を実施していた私立医学部のうち5校が、2026年度は2月に日程を移動することになりました。下に掲げたのが昨年度と今年度で1月に一次試験を行う大学の比較です。こうしてみると、首都圏の大学で1月に一次試験を行うところは国際医療福祉大学と帝京大学しかありません。まだ歴史の新しい国際医療福祉大学と東北医科薬科大学が入っているのも興味深いところです。
1月に一次試験を行う私立医学部
2025年度 | 2026年度 |
◎愛知医科大学 ◎岩手医科大学 ◎国際医療福祉大学 杏林大学 ◎帝京大学 ◎東北医科薬科大学 ▲関西医科大学 ▲近畿大学 川崎医科大学 ◎自治医科大学 獨協医科大学 ▲兵庫医科大学 金沢医科大学 北里大学 | ◎愛知医科大学 ◎岩手医科大学 ◎国際医療福祉大学 ◎帝京大学 ◎東北医科薬科大学 ▲関西医科大学 ▲近畿大学 ◎自治医科大学 ▲兵庫医科大学 |
関西の私立医学部が無風な理由は?
さて、上の表を見てもらうとわかる通り、関西にある私立医学部3校は2026年度入試において、これまでと変わらず1月に一次試験を行います。いわば“無風”と言えます。
これには理由があり、関西の私立大学では年内に学力試験のある併願入試を行うことが定着しています。例えば、医学部のある近畿大学では、医学部以外の学部も学校推薦型選抜として、11月に学力試験を実施しています。近畿大学医学部の推薦入試は、私立医学部の中では珍しい「併願できる推薦入試」ですが、そもそも大学全体で併願可の推薦入試を行っているのです。
そのため、今回の東洋大学に端を発した「2/1以降ルール」の順守に関して、関西の私立大学は“無風”であり、関西医科大学、近畿大学、兵庫医科大学はこれまで通り1月に一次試験を行います。
もっとも、大学入試には「2年前ルール」というものがあり、入試に大きな変更がある場合は、受験生の便宜を考えて「2年前までに通達すること」というルールがあります。今回は東洋大学の1件から2026年度入試までは1年しか時間がありませんでした。
おそらく再来年の2027年度入試では、さらに多くの私立医学部が2月に一次試験を移動すると考えられます。その中に関西の私立医学部が入ってくるかどうかは何とも言えませんが、以前と比べれば「2/1以降ルール」を順守する私立医学部が増えているのは確かです。
これは長く医学部入試を見てきた私の個人的な意見になりますが、2018年に発覚した東京医科大学の不正入試事件以来、これまでどこか“アンタッチャブル”だった医学部の入試に対して、文部科学省が以前よりも介入するようになった印象があります。
また、大学も外部評価される時代になり、日本医学教育評価機構(JACME)による評価報告書にも「入学方針と入学選抜」の項目があります。そこでは多様性のある選抜が行われているかや、大学の使命、アドミッションポリシー・ディプロマポリシー・カリキュラムポリシーと入試による学生評価が合致しているかなどが評価の対象となります。
文部科学省の通達に従っているかどうかが大学の評価につながるため、このところ徐々に2月に一次試験を行う私立医学部は増加傾向にありました。例えば、2020年度入試では全体の約6割にあたる18校の私立医学部が1月に一次試験を行っています。それでも、2026年度入試において、一気に「2月入試への移行」が進んだ印象は否めません。
最大のポイントとなる2/1から2/4の考え方
さて、2026年度私立医学部入試においては、2/1から2/4の4日間に17校の一次試験が重なっています。この4日間にどこを受験するかが大きなカギとなることは間違いありません。
2/1(日) | △日本大学 △東京女子医科大学 ▲川崎医科大学 ▲久留米大学 |
2/2(月) | △杏林大学 △日本医科大学 △東海大学① ▲福岡大学 |
2/3(火) | △順天堂大学 △北里大学 △東海大学② ▲金沢医科大学① |
2/4(水) | △東京医科大学 ▲金沢医科大学② ▲藤田医科大学 |
注)△は東日本の大学、▲は西日本の大学
注意してほしいのは、東日本の受験生は東日本の大学、西日本の受験生は西日本の大学を受ける傾向があるということです。やはり、できれば馴染みのある大学に行きたいというのが受験生心理であり、それを逆手に取って受験校を選ぶという戦略もあり得ます。
さらに、最も大きな問題として難易度があります。医学部受験生の多くが、大手予備校が公表している偏差値ランキングを、上位/中堅/下位と分けて自分に合ったレベルの大学を受けようとする傾向があります。
2/1は東と西で受験校が分かれる
2月入試のトップバッターとなる2/1は、東日本で日本大学と東京女子医科大学、西日本で久留米大学と川崎医科大学がバッティングしています。この4校を比較すると、おそらく受験生は次のように分かれるのではないかと考えられます。
東日本 | 西日本 | ||
日本大学 | 東日本の学力上位層 | 久留米大学 | 西日本の学力上位層 |
東京女子医科大学 | 全国の学力に自信がない女子層 | 川崎医科大学 | 西日本の学力に自信がない層 |
西日本の医学部受験生は、学力によって綺麗に久留米大学と川崎医科大学に分かれると思います。日本大学は全国区なので、西日本の医学部受験生も多少は受けてくると思いますが、九州の医学部受験生は、ほとんどが2/1久留米大学、2/2福岡大学と地元の大学を受験するでしょう。
表にしてみるとよくわかりますが、この4校の中では、東日本と(数は少ないものの)西日本の学力上位層を集める日本大学が最も難易度が高いということになります。
女子しか受けられない東京女子医科大学と、岡山にある本学キャンパスでしか受けられない川崎医科大学は、どちらも受験生にとって「受けにくい」要因を備えています。さらに、どちらも学費が6年間で4500万円を超えることから、限られた医学部受験生しか受けることができないのもポイントです。
2/2は東の中位層以下が悩むところ
2/2は東日本の私立医学部が集中しています。全国の医学部受験生のうち“腕に覚えのある”学力上位層は日本医科大学、それ以外の東日本の受験生は杏林大学と東海大学に分かれ、西日本の受験生の多くは福岡大学を受けると思われます。
東日本 | 西日本 | ||
日本医科大学 | 全国の学力上位層 | 福岡大学 | 九州の受験生 |
杏林大学 | 東日本の中位以下の層 | ||
東海大学① | 理科のどちらかに自信のない層 | ||
また、医学部受験生が受験校を選ぶ際に、地域と偏差値ランキング以外にもう一つ、立地という判断材料があります。基本的に都心に近ければ近いほど大学の難易度は上がる傾向があります。
よって、東海大学よりも杏林大学の方が受験生の学力は全体的に高いと予想され、東海大学は数学IIIがなく理科1科目選択という試験科目の特性から、現役生や理科に自信のない文系再受験生に選ばれやすいと言えるでしょう。
2/1に川崎医科大学を受験した東日本の医学部受験生は、東海大学ないしは福岡大学であれば、大阪か名古屋の地方会場で受験できることも大きなポイントです。ちなみに、日本医科大学も福岡に地方会場を設けています。
2/3は北里がまた“エアポケット”になる?
実は2/1から2/4の4日間のうち、最大のポイントは2/3と言えます。上位層は順天堂大学を受けると思われますが、一次試験日が2日間もうけられている東海大学と金沢医科大学がここでバッティングするからです。
東日本 | 西日本 | ||
順天堂大学 | 全国の学力上位層 | 金沢医科大学① | 西日本の学力中位以下の層 |
北里大学 | 東日本の中位以下の層 | ||
東海大学② | 理科のどちらかに自信のない層 | ||
ただし、東海大学と金沢医科大学の複数日受験には、大きな違いがあります。東海大学は標準化、つまり日程や試験の難易度差によって不利益が生じないように偏差値換算されます。
金沢医科大学は単純に素点で判定され、さらに一般前期には足切点が設けられています。足切点の基準は公表されていませんが、大学の入試担当者によると「昨年該当した受験生はごく少数」とのことなので、それほど神経質になる必要はなさそうです。
一般的に素点勝負なら複数日受験、標準化されるなら1日受験でもそこまで不利にならないと言われます。多くの医学部受験生を見てきた個人的な意見としては、素点/標準化換算に関わらず、学力に自信がなければ複数日受験が鉄則です。逆に学力に自信があれば、素点換算の帝京大学医学部であっても、3日間受験しなくても合格できます。
ここは理科1科目と理科2科目のどちらが「自分にとって有利か?」を考えて受験校を選んでもいいでしょう。一次試験日が1日しかない北里大学と合わせて、どの大学の問題が自分と合っているかの判断になります。昨年度に引き続き、今年度もまた北里大学は“エアポケット”(受験生が選びにくい)の入試日程になりそうです。
また、二次試験日を見てみると、東海大学は二次が集中している2/14・2/15のどちらか、北里大学は3日間設けられているため2/16が選択可能、金沢医科大学は2/16ないしは2/17が選択可能です。
2/4は旧設の東京医科vs学費減額の藤田医科
2/4は2026年度から学費を約30%減額することで話題になった藤田医科大学と、東日本の旧設医大である東京医科大学がバッティングします。
東日本 | 西日本 | ||
東京医科大学 | 東日本の学力上位層 | 藤田医科大学 | 西日本の学力上位層 |
金沢医科大学② | 西日本の学力中位以下の層 | ||
普通に考えれば、東と西の学力上位層が東京医科大学と藤田医科大学で綺麗に分かれるでしょう。学力中位以下の受験生は金沢医科大学の2日目に・・・と言いたいところですが、東海地方の医学部受験生にとって、地元の藤田医科大学は憧れの志望校であり、ここを受験しないのは“断腸の思い”と言えます。しかも、2026年度から藤田医科大学は一般後期が廃止されたため、私立専願の受験生は2/4しか藤田医科大学を受ける機会がありません。
ひとまず、藤田医科大学と金沢医科大学の両方に出願しておいて、1月入試である愛知医科大学の一次試験の結果を見てから、藤田を受けるか/金沢を受けるかを判断してもいいように思います。
また、入試問題のタイプから言うと、国公立医学部志望者はマークシート式(2026年度から数学に一部記述あり)の東京医科大学よりも、記述とマークシート式の混合型である藤田医科大学の方が対応しやすいと思われます。
獨協医科大学が前期の“ラストバトル”
さて、2026年度私立医学部入試の一般前期は、2/11・2/12の獨協医科大学が事実上の“ラストバトル”となるでしょう。この時点で二次試験の合格発表が終わっている大学は、岩手医科大学、国際医療福祉大学、川崎医科大学の3校しかありません。
つまり、この3校の正規合格を持っている医学部受験生以外は、この時点でまだどこも進学先が決まっておらず、その多くが獨協医科大学を2日間受験すると考えられます。
入試日程がここまで後ろ倒しになっていると、当然ながら一般後期まで受験することを念頭に入れて動く必要があります。一般後期の出願締切は埼玉医科大学が最も早く、2/17に締め切られます。獨協医科大学の一次合格発表は2/17ですので、獨協医科大学の一次試験の結果を見る前に、後期の出願を準備しておく必要があります。
2/14・2/15は“二次試験ラッシュ”
最後に、二次試験日についても簡単に触れておきます。二次試験で行われる面接の試験官を確保するために、多くの私立医学部が二次試験日を大学病院が休診となる土曜・日曜・祝日に設定しています。
2026年度の入試日程であれば、2/14(土)と2/15(日)のどちらかに13校の私立医学部の二次試験が行われます。まさに“二次試験ラッシュ”と言っていいでしょう。
二次試験日を複数設けている大学のうち、川崎医科大学を除くすべての大学が出願する際に二次試験日を選ぶことができます。ただし、二次試験日が必ずしも希望通りになるとは限りません。大学によってなるべく希望日になるように工夫はできますが、絶対に希望日になるとは言い切れないのが難しいところです。
また、一次試験の合格発表後に二次試験日を変更できる大学もあります。東北医科薬科大学と東邦大学は手続きをすれば二次試験日の変更が可能であると募集要項に明記されています。
この限られたスペースですべての内容を話すのは非常に難しいので、メルリックス学院の生徒であれば各校舎の教務スタッフにご相談いただければと思います。外部の方であれば、お近くのセミナーでお会いした際に少しでもお話しできればと思っています。
最後に、こちらからメルリックス学院オリジナルの入試日程表をダウンロードできます。ぜひどこを受けるか迷っている医学部受験生の助けになれば幸いです。






