
東北医科薬科大学の教員向け説明会に行ってきました
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
少し前になりますが、仙台にある東北医科薬科大学に行ってきました。教員向けの説明会が行われるということで、仙台駅からバスで20分弱、JR仙山線・東照宮駅から徒歩15分ほどのところにある小松島キャンパスを訪ねました。
学生の約8割が東北以外の出身者
東北医科薬科大学は2016年に37年ぶりとなる医学部が新設されました。前身は1939年に創立された東北薬科大学であり、東北の薬剤師や医療、地域に関わる人材を多く輩出してきた長い歴史があります。
東日本大震災後に設立された医学部は、日本の地域医療を支える医師の育成、および災害医療にも対応できる総合診療医の育成などを使命とし、毎年定員100名を一般選抜のA方式・B方式・一般枠、そして共通テスト利用選抜、総合型選抜で募集しています。昨年度から総合型選抜が加わり、より多様な入試で人材を募集するようになりました。
説明会でも話がありましたが、学生全体の80%が東北以外の出身者ということです。いわゆる医学部の不適切入試事件の時にあったような「不公平な地元優遇」はないと言えると思います。卒業後の臨床研修先における東北各県の割合は6割以上との話もありました。
数少ない1月入試を行う9校のうちの1校
さて、東北医科薬科大学の2026年度一般選抜は「1月入試」として行われます。具体的には一次試験が2026年1月24日(土)、二次試験が2026年2月7日(土)と8日(日)のどちらか1日となります。
「2/1ルール」順守の影響で、多くの私立医学部が2月に一次試験を行う中で、数少ない1月入試を行う9校のうちの1校として、2026年度入試では受験生が集中しそうです。
ちなみに、2026年度の私立医学部入試日程では、帝京大学医学部の3日目と一次試験が重なっており、翌日の1月25日(日)は近畿大学医学部の一次試験が行われます。
東北医科薬科大学の二次試験には大きな特徴があります。それは「一次試験の合格発表後に、最初に指定した試験日を変更できる」ということです。
この「二次試験の変更」を学生募集要項で公式にうたっている私立医学部は2校しかありません。東北医科薬科大学ともう1つは東邦大学医学部です。
しかも、東邦大学医学部は振替え受付日時が決まっており、その時間内に窓口まで受験票を持っていかなければなりませんが(申請するのは受験生本人でなくても可)東北医科薬科大学はインターネット上で変更の手続きができます。
2026年度の私立医学部入試は試験日が2月1日以降に集中しているため、二次試験も多くが重なっています。2月7日・8日に二次試験を行う大学は、他に兵庫医科大学や川崎医科大学、近畿大学などがあります。
例年以上に変更を希望する受験生が多いことが予想されるため、大学の方に「今年も二次試験日の変更を実施されますか?」と聞いたところ「なるべく受験生の方のご要望に応えたいと思います」とのことでした。必ず変更できるとは限りませんが、対応していただけるだけでも、受験生にとっては少し肩の荷が軽くなる思いでしょう。
合格最低点はどのぐらい?
教員向け説明会では合格者の平均点についての細かい話もありました。2025年度入試に関しては、物理・化学選択と物理・生物選択の間に平均点の有意差はなく、どちらも同じぐらいの平均点でした。
A方式・B方式・一般枠とそれぞれ合格ラインは異なりますが、一次試験に関しては大体7割ぐらいの得点率が通過の目安になりそうです。データを見ると、一次合格者の平均点よりも入学者の平均点の方がわずかに低いのですが、これは成績上位者が入学辞退すること、また二次試験である程度の逆転が起きていることが予想されます。
東北医科薬科大学は補欠通知/補欠順位といったものがなく、二次試験を受けた人全員が(正規合格者以外)繰り上げ候補者の対象となります。2025年度入試でも、メルリックス学院の生徒にギリギリで繰り上げ合格が回ってきましたが、補欠通知がないため半分あきらめているような状態で待つことを辛いと感じる受験生も多いでしょう。
今回の説明会では、合格判定の繰り上げについても、図表を使ったわかりやすい説明がありました。その説明を聞くと、A方式2県・B方式・一般枠の4つを第1志望から第4志望まで併願できるという仕組み上、補欠順位を付けるのが難しいことがわかります。
既に一般枠の合格を確保している受験生が第4志望でB方式を希望している場合、それより下の点数でB方式を第3志望以上で希望している受験生がいれば、そちらが先に繰り上げ合格になる……ということが起こり得るからです。
また、付け加えておくと、2022年度から実施されている共通テスト利用選抜は、共通テストリサーチでは、高いボーダーラインが出ることが多いのですが、2025年度の合格者平均点は85%を切っており、平均点が上ぶれした年にしては、そこまで高くないことをお伝えしておきます。共通テスト終了後にも出願できるため、得点率によっては狙ってみてもいいと思います。
二次試験である程度の逆転が起きる大学
東北医科薬科大学は、これまでのメルリックス学院の生徒を見ていても、二次試験の小論文と面接である程度の逆転合格が起きる大学だと考えています。
補欠順位が付いていないこともあって、不透明さを感じる受験生もいるようですが、学力試験だけでなく、小論文と面接にもしっかりとした準備が求められる大学という印象です。大学の方も「二次試験はしっかり見ます」とおっしゃっていました。
昨年度から始まった総合型選抜も、東北地域定着枠でありながら、東北地方と縁もゆかりもない生徒が合格しています。やはり東北の地域医療にどのように貢献したいかを出願書類と面接でどれだけアピールできるかが重要になるでしょう。
2026年度より学費値上げ
説明会では2026年度入学生から学費が値上げされることも説明がありました。物価や人件費の高騰などもあり、授業料を年間50万円増額し、これまでの6年間3400万円から300万円プラスの3700万円になるとのことです。
A方式の6年間3000万円の貸与金額に変更はなく、B方式も大学から6年間1500万円が支給されることに変わりはありません。このA方式とB方式は、いわゆる「地域枠」になるわけですが、東北6県それぞれの修学資金貸与制度についても、詳しく説明がありました。
詳しくは割愛しますが、地域枠というと「入試難易度が低いから学力ギリギリの人が受ける」といったイメージで時に揶揄されることもありますが、やはり「修学資金が貸与される」ことで私立医学部に進学が可能になる受験生が一定数いることを改めて感じました。
東北医科薬科大学はA方式>B方式>一般枠と、学費が安くなる方式ほど合格ラインが高い傾向にありますが、私立医学部は経済的に厳しいご家庭が、修学資金貸与制度を受けることによって医学部に進学できるという側面は無視できないなと思いました。
東北医科薬科大学は2027年4月に、医薬生命情報学部と看護学部を設置する方向で進んでいます。医療系大学として、今後も東北地方の地域医療の一端を担っていくことは間違いないでしょう。
※東北医科薬科大学は8月3日の医学部合同説明会にも参加します!