
2026国公立医学部入試の難易度最新予想
皆さん、こんにちは。
メルリックス学院代表の佐藤です。
今回の記事では2026年度国公立医学部入試の最新予想を、昨年度の志願者数の動向や二次試験合格者の平均得点率に照らして、検討して参ります。共通テストの配点について留意すべき点についても触れています。
目次[非表示]
◆昨年度2025入試で志願者が大幅に増えた国公立医学部
国公立医学部全体を振り返ると昨年度2025年度国公立大学医学部入試前期は、2024年度と比較して、前年度比915人減少となりました。
共通テストがとりやすかった関係もあり、足切ラインが上昇することを恐れたことが原因と考えられます。
2023年度から2024年度へは志願者数が262人増加であったことを考えると、そういった影響が出たものと思われます。
2025年度入試において志願者上昇率が高かった前期日程トップ10を見ます。
高い順位から富山大学、鳥取大学、徳島大学、宮崎大学、鹿児島大学、滋賀医科大学、佐賀大学、弘前大学、広島大学、秋田大学、山形大学、群馬大学の順でありました。
上記の結果からみて、志願者数が伸びた大学の特徴の一つ目として、12位の群馬大学まで地方大学で独占されていることが挙げられます。また、富山大学、鳥取大学、佐賀大学については、いわゆる「隔年現象」が色濃く出た結果といえます。
また、志願者数が増えた大学の特徴の二つ目として、二段階選抜実施予定倍率が5倍を超えている大学で占められています(滋賀医科大学を除く)。
隔年現象の項でも述べますが、二段階選抜実施予定倍率が5倍を超える大学は隔年現象も起こりやすくなります。
先述した通り、2025年度は共通テストが得点しやすかった分、地方国公立大学医学部に出願した数が増えた結果となりました。一方、旧帝国大学医学部、大都市圏国公立医学部は軒並み例年通りで堅調でありました。
それでは2025年度入試で志願者数を大きく伸ばした主な医学部を個々にみていきましょう。
富山大学医学部
富山大学はこの偏差値帯の大学にしては二次試験で差が付きやすい問題であることから隔年現象以外にもそのような要因があったといえます。
特に二次試験合格者平均得点率が8%も上昇していることから、共通テストの成績が奮わなかったが、二次力に自信のある受験生が集まった結果といえます。
鳥取大学医学部
鳥取大学は二段階選抜の指標を客観化している関係で共通テストが高ぶれした場合の心理的安定につながったとみる向きが妥当といえるでしょう。
一方で、二次試験合格者平均得点率がほぼ横ばいであったことから、共通テストの成績で勝敗が決まる傾向が強いとえるでしょう。問題もほぼ他学部共通問題で標準的であることからも説明が付きます。
徳島大学医学部
徳島大学は圧倒的に一次重視であり、理科を二次試験に課さないことから共通テストが取れた理科の学習が進んでいない現役生が占有した可能性が高いといえます。問題も他学部共通問題で標準的な形式です。
滋賀医科大学・群馬大学医学部
他に特筆すべき点としては滋賀医科大学と群馬大学であります。
いずれの大学も二次試験で差がつけられる大学ということもあり、関西や関東の共通テストの成績が奮わなかった上位層が受験することが多い点が特徴であります。
また滋賀医科大学に関しては共通テスト国語の配点が高いことから、共通テスト国語が得点しやすかったことも影響しているといえましょう。
群馬大学に関しても数学、英語が医学部固有問題で二次試験において差がつきやすいので、富山大学同様、逆転を狙った受験生の出願が増えたことが考えられます。
弘前大学医学部
弘前大学医学部は予想していた通り、二次試験の教科を総合問題から数学、英語に戻したことにより大幅な志願者増に繋がりました。
問題も数学、英語とも医学部独自問題ではありますが、難度は標準的なものでありました。
◆2025年度国公立医学部入試での「隔年現象」
志願者数の推移を検証する中で、前年度より大幅に志願者数を増やした大学と減らした大学をみると隔年現象を起こしている事実が浮き彫りになります。
隔年現象とは、1年置きに志願者数が増加と減少を繰り返すことです。志願者数が増えた大学は倍率と難易度が上がるので、その次年度はそれを嫌って志願者数が減り、減った年は倍率と難易度が下がるので、更にその次年度は志願者数が増える、といった具合です。二段階選抜実施予定倍率も関係してきます。
2025年度入試で、逆に志願者数を大きく減らした大学を見てみます。
減少の数がトップだったのが三重大学、次に福島県立医科大学、信州大学、島根大学、山口大学と続きます。こちらも6校中4校が二段階選抜実施予定倍率5倍以上の大学です。
三重大学医学部
個々にみていきますと三重大学が2025年度最も志願者数を落とした国公立医学部でした。
志願者数が減少した原因について考察してみたいと思います。2024年度入試は旧課程入試実施のラストイヤーだった年度であります。しかもその年は岐阜大学が二段階選抜のラインを9倍から3倍にしたこともあり、安全パイを取りに行った受験生が三重大学に殺到しました。実際、中京圏では名古屋大学から三重大学に志望を落としてきた受験生が多かったです。同じ現象が長崎大学についてもいえるでしょう。
島根大学医学部・山口大学医学部
島根大学、山口大学が隔年現象を起こしていることに関しては、もはや定番であります。目先の難易度・倍率に目を奪われないように気をつけましょう。
福島県立医科大学
福島県立医科大学は2023年度、2024年度と超高倍率が続いていましたが、2025年度入試でようやく終息しました。これも共通テストの高ぶれへの警戒心(二段階選抜への警戒心)の現れとも取れます。
このような記事を出すとこれらの大学は2026年度入試において倍率が上がる可能性を問われます。確かにその可能性が高まることは予想されますが、倍率だけではなく、共通テストの得点から二次試験にどの程度のスコアを取らないといけないか計算して可能性の高い大学に出願したいものです。倍率のみに気を取られて出願するのは早計過ぎると言わざるを得ません。
◆2025年度二次試験合格者平均得点率の変動
2025年度国公立医学部入試前期試験において合格者二次試験平均得点率が上昇した大学トップ10と下がった大学トップ10を見ていきたいと思います。
二次試験合格者平均得点率とは、二次試験の合格者が、各大学の二次試験において平均どのくらい得点していたかという得点率を比較したものです。
合格者二次試験平均得点率の上昇ランキングでは、和歌山県立、岐阜、富山、高知、奈良県立(後期)、宮崎、三重、京都、九州が挙げられます。
京都、九州といった旧帝国大学がランクインしてくることは意外でした。
なお、大阪大学、名古屋大学も前年比4.3%、3.5%と二次試験合格者平均得点率が上昇しているので、旧帝国大学の問題難度が例年より平易だったといえるかもしれません。
2026年度入試以降はまた元に戻してくる可能性が高いので、2024年度入試を想定した準備をされておくべきです。
和歌山県立医科医科大学
次に和歌山県立医大ですが、合格者二次平均得点率が11.4%も上昇しました。志願者数はほぼ前年並みだったことから、ようやく受験生の学力層に合う問題になったといえます。和歌山県立医大は問題の難度が極めて高いことで有名でした。地域枠の学生も多く選抜している関係で、2024年度までの入試だと受験生の真の実力が図れていなかった可能性が大きいでしょう。2026年度は若干、問題の難度を戻してくるとは思いますが、ほぼ2025年度入試に近い内容で二次試験が行われると思われます。
富山大学医学部・高知大学医学部
次に富山大学と高知大学は8%程度、合格者二次平均得点率が上昇しておりますが
これは共通テストの平均点が高ぶれした影響で、本来、岡山、広島、神戸あたりを本命にしていた受験生が、富山大学や高知大学に出願したということが大いに考えられます。
夏前まで河合塾が高知大学の二次ランクを67.5と発表されていたことからもその可能性が高いでしょう。一般に、四国の国公立医学部は、徳島大学が二次試験に理科なし。香川大学が共通テスト国語の配点を2倍に設定。愛媛大学の英語が総合問題であります。
以上から神戸大学、岡山大学、広島大学、あたりを主眼に置いていた受験層にとって高知大学は二次比率が高いことからも、二次で与しやすい試験形態であると受け取られたことも、合格者二次試験平均得点率上昇の大きな要因になっているでしょう。
宮崎大学医学部
次に宮崎大学は志願者増加率も全国5位であり、前年より優秀な受験生が集まった公算が高いといえます。一方、三重大学は志願者数の減少が全国で最も激しかったのにも拘わらず、合格者二次平均得点率が大幅に上昇しました。
この原因は、メルリックス学院の講師陣が分析したところによれば、問題の難易度が大きく変わらない傾向があったところに前年の倍率にも怯むことなく挑戦する受験生が集まったという可能性が考えられます。
次に合格者二次平均得点率が下降した大学について見てみます。
下降率が高い大学を上位から
山梨大学(後期)、千葉大学、福島県立医科大学、山口大学、筑波大学、京都府立医科大学が挙げられます。
山梨大学医学部・京都府立医科大学
この中で山梨大学(後期)と京都府立医科大学は受験層が安定しております。
これらの大学は元来、難問型の入試を実施する大学ではありますが、更に問題の難度を上げた可能性が高いです。
特に山梨大学(後期)、京都府立医科大学は合格者二次平均得点率が60%を大幅に割ってきているので、2026年度入試では戻してくる可能性が高いです(福島県立医科大学も同様の傾向あり)。
千葉大学医学部
一方、千葉大学は工学部も関東圏の国公立大学で高位の難易度を誇っております。以前の標準問題型から難問型へのシフトを図っている感じです。
関東圏の国公立大学医学部の中でも実質的に東京大学、東京科学大学の次の位置を確立しているので、2026年度入試以降も、難度の高い入試問題で試験を実施する可能性が高いです。
筑波大学医学部・山口大学医学部
筑波大学は以前から難易度の割に入試問題の難度が低すぎる点を指摘されておりました。しかし、2025年度入試では数学の問題傾向も変わり、問題の難度もかなり上がったので、その影響が出ました。
最後に山口大学も2025年度入試は隔年現象により、受験者数は大幅に減少しましたが、こちらもメルリックス学院の分析では数学の問題が例年より難しく、合格者二次平均得点率が下降したといえます。
このように数学や理科の一問、二問の問題の難度の差で合格者二次平均得点率が大きく変動するのも、こういった医学部の受験層がハイレベルな成績をもつ受験生の集団であるからこその証であります。
◆共通テストの傾斜配点を攻略する
共通テストの配点が特殊な大学を列挙してみます。これらを考慮することによって、自分に合った国公立医学部に出願することができます。
1. 国語を重視している大学群
① 北海道大学 英数(理2) 各60点 国80点 社40点 情報15点
② 滋賀医科大学 英数(理2)社各100点 国200点 情報50点
③ 香川大学 英数社各100点 国(理2)200点 情報配点無し
④ 島根大学 英数社各100点 国(理2)200点 情報30点
2. 国語、社会の配点が低い大学群
⑤ 大阪公立大学 数(理2)各200点 英国100点 社50点 情報25点
⑥ 奈良県立医科大学 英数各200点 国100点(理2)300点 社50点情報50点
3.その他の大学
⑦ 熊本大学 英国(理2)100点 数社50点 情報50点
私が長年指導していて感じていることは、共通テストの得点率を見てボーダー以上の大学に出願してしまう受験生が多いことです。
しかし、共通テストの配点に関して、以下の点を少し頭の片隅に入れておくだけで、合否結果の出方が変わってくることがあります。
例えば、国語が非常に得点できた受験生の場合は、共通テストが仮に失敗したときでも1の大学群に出願すれば、2、3の大学群(均等配点の大学)に出願するより合格の可能性が出てきます。1の大学群は2,3の大学群より多いのが特徴です。
大阪公立大学医学部
文系教科が苦手で理数に卓越した能力を発揮する受験生であれば、2の大学群に属する大阪公立大学に出願する手もあります。ただし、大阪公立大学は、昨今、旧帝国大学並みに受験層が上昇しておりますので、二次力も旧帝国大学医学部に匹敵する学力が要求される点で要注意です。
奈良県立医科大学
奈良県立医科大学は二次試験が論述試験ですので、文章作成能力に問題はないですが、共通テスト国語や社会が不得意な受験生であれば挑戦してみる価値はあるでしょう。
熊本大学医学部
また、共通テスト数学を失敗してしまったが数学の二次力に自信があるという受験生の場合は、3の大学群に属する熊本大学という作戦も取れます(裏技ですが)。
このようにみてくると、共通テスト国語の配点を低くしている大学が大阪公立大学や奈良県立医科大学以外になく、理科の配点を低くしている大学がないことに注意が必要です。特に医学部は、国公立・私立問わず、国語力、理科に関して共通テストを通して重視していることが鮮明です。それは後述する私立医学部の共通テスト利用で殆どの大学で共通テストの現代文を課していることからも通ずる点です。加えて理科を二次試験に課していない国公立5大学にとっても共通テスト理科で学力をしっかり測る意味が濃くなります。
共通テスト国語について
もう一つの視点として国公立医学部を考えるか私立大学医学部を選択するかは共通テスト国語が大きな分水嶺になっているのが現実です。現代文はなかなか努力した分の成果が返ってこない現実です。
医学部入試では国語、社会に時間を多くは避けない点から鑑みても、共通テスト国語(特に現代文)で苦戦を強いられる受験生は早めに私立専願に切り替えるのも得策といえましょう。
◆二次試験での逆転合格!?二次試験科目が特殊な医学部
次に、国公立医学部入試において二次試験で逆転を考える場合、二次試験の配点が得意な大学を受験校選択するという方法があります。
つまり、特異な出題をする大学を受験校に選択するケースであります。
まず、二次試験の配点が特殊な大学としては、
広島大学医学部(英数理均等型、理科特化型、英数特化型)
岡山大学医学部(数英各400、理300)
山梨大学医学部(後期)(数英各600 理1000 面接100)
が挙げられます。
これらの大学は国公立大学医学部の中でも上位難関大学に位置付けられ、実質的に共通テストが大きく下回っては受験者レベルも高いので挽回が困難でありますが、数英もしくは理科の二次力に郡を抜いた実力を出せる受験生には勧められます。
群馬大学医学部・愛媛大学医学部
一方、群馬大学、愛媛大学といった英語に小論文形式、総合問題で出題する大学は二次試験で逆転が起きやすいです。
群馬大学は英語の他に数学も医学部固有問題であり、難度の高めな問題を出す傾向にあります。ある意味二次で大きく差を付けられる内容です。
また、愛媛大学についても同じことがいえます。対照的に筑波大学は二次試験の問題も比較的易しめで適性検査300点、面接点も200点割り振られていることから努力が結果に結びつかない怖さもあり、群馬や福島県立医科を選択する受験生も多いです。
このように国公立大学医学部の出願を考える場合は、配点や得点率だけではなく受験者層のレベルにも目を向けることが非常に大切です。
二次試験が英語・数学だけの医学部
最後に、二次試験が英語、数学だけの大学についても注意を喚起しておきたいです。
二次試験に理科を課さない大学は旭川医科、弘前、秋田、徳島、島根5大学あります。いずれの大学も国公立大学医学部の偏差値ランキングでは下位に位置する大学ですが、徳島大学以外は医学部固有問題で二次試験を課してきます。
弘前以外は英語、数学だけでも難度が高めの問題を出してくる印象です。
その中でも旭川医科、徳島以外は二次試験合格者平均得点率が8割前後ありますので、二次試験の科目が少ない分、高得点勝負になる傾向が高いです。
安易に理科を二次試験に課されないからと飛びつくのは危険です。
◆まとめ
以上、今回は2026年度国公立医学部入試の難易度を予想するために、昨年度2025年度入試での志願者数の増減、それに与える原因、二次試験平均得点率、共通テスト配点などを、各大学ごとに検討して参りました。
受験生それぞれの学力や傾向、目指すランクや地域、あるいは、共通テストの得点の仕方によって、準備や考え方が全くかわってきます。
より詳細な受験情報や、受験生ひとりひとりに即したアドバイスをお求めのかたは、お気軽にメルリックス学院の各校舎や、オンライン受験相談までおたずねください。
国公立医学部・私立医学部を目指す受験生の一助になればと願ってやみません。








