
最近の医学部面接で気になる2つの傾向
こんにちは。
受験情報センター長の鈴村です。
医学部受験の面接を指導していて、最近気になっていることが2点あります。1つは「面接落ち」という言葉が、非常に安易に使われているということ。もう1つは、医学部受験の面接と就活における面接マナーが混同されていること。
最近の受験生に見られるこの2つの特徴について、お話していきたいと思います。
「面接落ち」は本当にあるのか
「去年は◎◎医科大学で『面接落ち』しちゃって~」
医学部受験生と話をしていると、時々そう言われることがあります。「面接で『不可』が付いたの?」と聞いてみると、単に「医学部の2次試験で補欠候補者に入らなかった」ことを「面接落ち」と称していることがほとんどです。
まず基本的なことですが、医学部入試は一次試験と二次試験の点数の合計で合否判定が行われます。2次試験を受験したが補欠候補者に入っていない場合、その多くは「面接落ち」ではなく、単純に「一次と二次の合計点数が足りない」ケースがほとんどだと思われます。
もちろん、医学部の中には、面接や小論文試験に一定の基準を設け「不適格」と判断すれば、学科試験の点数に関わらず不合格とするケースもあり、学生募集要項にその旨が記載されている大学もあります。しかし、大学に聞くと「不適格」の基準は明確であり、本当の意味で「面接落ち」する受験生は、非常に少数と言っていいでしょう。
医学部受験生は一次試験でできる限り得点した上で、二次試験の小論文や面接で万全の準備をすることを心がけましょう。
就活マナーは医学部面接にも有効か
最近、就活面接があまりにもマニュアル化されて一般に拡がっているせいか、医学部の面接でも、就活マナーを参考にして臨む医学部受験生がいるようです。
例えば、面接室の入退室やお辞儀の角度といったマナーを、過剰なまでに気にするのが、そのひとつです。私は以前、企業の人事部にいたことがありますが、その手の就活ビジネスマナーは、当の人事部ですら「やり過ぎ」と話題になることがあります。例えば、面接室のドアをノックする時に「ノック2回はお手洗い。ノックは必ず3回で」といったマニュアルが存在するようですが、実際にドアのノックの回数で不合格になることはありません。
就活の面接でさえそうなのですから、医学部の面接では、過剰なビジネスマナーは求められていません。求められるのは、あくまで「公の場所における、目上の人に対して失礼のない態度」です。
以前、ある医学部の推薦でグループ面接が行われた時のことです。部屋に入ると、面接官の先生方が「どうぞおかけください」と受験生を椅子に促しました。メルリックスの生徒は素直に腰を下ろしましたが、他の2人は頑なに立ったまま、面接官が「どうぞ」と言っても遠慮してなかなか座ろうとしなかったそうです。
相手に対して敬意を払うためのマナーが、却って面接試験の進行を妨げることになってしまったケースです。そのせいかどうかはわかりませんが、グループ3人のうち合格したのはメルリックスの生徒だけで、他の2人は残念な結果になってしまいました。
また、再受験生の面接指導をしていた際に、就活面接のように大げさな自己アピールをされたことがあります。受験生から大きな声で「私は◎◎大学▽年の◇◇◇◇と申します!本日はお時間いただきありがとうございます!」と言われた時に、思わず人事部にいた時のことを思い出して「懐かしいなあ・・・」と思ってしまいました。
医師になる人を選抜するための面接だと考えれば、そのような過剰なまでの自己アピールは不要だとがわかるでしょう。冷静に考えればわかることですが、不安になっている医学部受験生は藁をもすがる思いで、いろいろな人のアドバイスを参考にするのでしょう。それだけで落とされることはないでしょうが、医学部の面接官はいきなり大声を出されて、さぞビックリするでしょう(笑)
アドミッション・ポリシーに当てはまっているか
医学部面接の採点基準は各大学によって違いますが、どの大学もアドミッション・ポリシーが基になっています。アドミッション・ポリシーとは、その大学の「入学者受け入れ方針」であり、大学がどのような学生を求めているかが記されています。すべてに適合している必要はありませんが、そのうちのいくつかは適合しているとみなされるように、面接でも意識して答える必要があります。
特に私立医学部にはそれぞれ設立の経緯があり、建学の精神や大学の理念がパンフレットに掲載されています。アドミッション・ポリシーはそれらを基に策定されていることが多く、ただ暗記するのではなく、大学の歴史や沿革をよく理解した上で、自分自身の将来像と結びつけて考えておくことが必要です。
藤田医科大学のように、アドミッション・ポリシーについて直接、面接試験で聞かれる場合もあります。また、過去にディプロマ・ポリシーが問われた大学もありました。ディプロマ・ポリシーとは、学生が在学中に達成すべき学修目標のことを言います。さらに、ディプロマ・ポリシー達成のために、どのような教育内容でどう学生を評価するかを定めた、カリキュラム・ポリシーがあります。
この3つのポリシーが、大学の教育内容を表しているため、面接試験を受ける前は必ずこの「3つのポリシー」に目を通しておきましょう。
よくある質問
Q.親が医師だということは隠した方がいいですか?
A.隠す必要はありません。
医学部受験生からよく聞かれる質問の一つですが、結論から言うと無理に隠す必要はありません。親が医師であることで有利になることもありませんし、不利になることもありません。
ただし、親や身内に医師がいる場合は面接官として「それだけが志望理由じゃないよね?」と念を押したくなります。身内に医師がいなければ「医師がどういう仕事かわかってる?」と覚悟があるかを聞きたくなります。しかし、それだけです。
Q.面接で嘘をついてもいいですか?
A.お勧めしません。
極度に緊張している面接の場で、大学教員である面接官に嘘をつくことは、予想しているよりもずっと難しいと思ってください。また、ひとつ嘘をつくと、また次の嘘をつかなければなりません。そうやって答えるうちに、つじつまが合わなくなることも充分にあり得ます。
面接官は学生や患者の話を常に聞いている医師であり、少しでも話に矛盾があれば聞き逃しません。下手な嘘をついて厳しく突っ込まれるよりも、飾らない自分の本音を話した方が受け入れてもらえる確率は高いでしょう。
Q.圧迫面接でした。落ちますか?
A.面接官の態度と評価は無関係です。
面接官が受験生に対して、わざと威圧的な態度を取ったり、答えにくい質問をしたりすることを圧迫面接と言います。
結論から言うと、圧迫面接と合否は直接的には関係ありません。私が面接官役をやっている時も「全然ダメだな」と思いながら、にこにこと質問している時もあります。(もちろん後でどこが悪いか指摘します)
厳しい質問を投げかけている時、面接官はもちろんそのことをわかっています。その厳しい質問に対して、受験生がどう答えるかを見ています。慌てることなく落ち着いて臨むことが大切です。
Q.グループ討論はディベートとどこが違うのですか?
A.勝ち負けと合否は関係ありません。
そもそも医学部のグループ討論で、ディベート形式が行われる大学は日本医科大学などごく一部に限られています。このことからも、医学部が求めているのはディベートに勝つ人材ではなく、グループ全体で協調性を大切にしながら、1つの結論を導き出せる受験生であることがわかります。最近流行っている「論破」を試みる受験生は論外です。医学部のグループ討論はディスカッションではなく、グループワークだと思ってください。
Q.医療の知識はどこまで必要ですか?
A.最低限の知識で大丈夫です。
医師を志す者として、最低限の社会問題や医療問題に関しては、知っておいてほしいと考えているのが医学部教員です。ただ、大切なことは、面接は学科試験とは違い、答えられたから○、答えられなかったから×という単純なものではありません。
面接で見られているのは、コミュニケーションに臨んでいる時の受験生の態度であり、その態度を通じて見えてくる人間性です。知らないことは知らないと正直に言う、ヒントを出されたら必死に考える、間違えたら素直に謝る、そういった態度を通じて、面接官である教員に「入学したら真面目かつ素直に勉強しそうだな」と思ってもらえることが何より大切です。
正解がないのが面接試験
メルリックス学院では、過去に医学部を受験した生徒達の膨大な報告と、実際に医学部の面接官を務めたことのある先生からうかがった内容や資料を基に面接指導をしています。
面接はスポーツと同じで、練習しなければ上達しません。頭の中でシミュレーションしているだけでは自ずと限界があります。また、受験生だけでなく面接官役の講師も、受験生を目の前にした時にどのようなことを聞いていくかのシミュレーションが欠かせません。
面接試験の難しい点は、はっきりと点数が出る学科試験と違い、いくら点数化しても面接官個人の判断に頼らざるを得ないところです。だからこそ、ほとんどの個人面接は面接官である教員を複数配置しています。評価が偏らないようにするためです。
そのことが却って、受験生には「正解のない試験」として曖昧に感じられることでしょう。ゆえに「面接落ち」という安易な言葉を生み、必要以上にマナーを気にすることに繋がっているのだと思われます。
医師を目指す者として、医学部の教員である面接官とどのようにコミュニケーションを取るか。型にはまらない人間力が問われるのが医学部面接の場だということが言えるでしょう。





