岩手医科大学医学部転部試験合格|歯学部からの転部試験で叶えた医学部への夢
医学部合格という夢を叶えるまでの日々をMさんと共に振り返ります。
※岩手医科大学では1年次から2年次に上がる時に「転部試験」を行っています。これは「現在所属する学部とは異なる学部への転籍を認める」制度であり、入学試験の募集要項にも記載されています。第 1 学年修了見込みで、学業・人物ともに優秀な者が対象となります。
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浪人はできないと言われて看護学部へ
――こんにちは、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。
M.Kさん(以下M):はい、おかげさまで岩手で元気にやっています。
――そもそもMさんはどうして医師になろうと思ったのか、そのきっかけから聞かせてもらえますか?
M:きっかけとしては小学校5年生の時に祖父が亡くなったことです。ICUに入っている時に感染症にかかったことが原因だったようなのですが、なかなか医師や病院からはっきりとした説明がなくて、あくまで病気で亡くなられました、という説明でした。
――なるほど、高齢者医療ではありそうなケースです。医師や病院の方に「この患者さんはもうそれほど長くない」という思いがあることが、その根底にあるように思われます。
M:私はまだ子供だったのですが、それがとても悔しくて、そういう患者さんや患者さんの家族が1人でも減ってほしいという思いから医師を志しました。
――現役生の時は推薦も一般も受けましたが残念な結果でした。
M:親からは「浪人はさせない」と言われていたので、医学部をあきらめて看護学部に進学しました。看護師としてやっていこうと気持ちを切り替えたのですが、病院実習に行った時にいろいろな思いが募って、前期が終了した時点で休学して医学部再受験をすることにしました。
大学を休学して再受験、そして歯学部に進学
――再受験を決めてからまたメルリックスに戻ってきてくれました。
M:はい。数学の佐野先生には本当にお世話になりました。私は数学が一番苦手だったのですが、佐野先生の授業がすごくわかりやすくて、少しずつですが理解できるという感覚が持てました。入試の最中も「こういう風に解くって先生が言ってたな」と思い出しながら解くことができました。
生物は割と得意な方で日田先生に教わっていたのですが、話がとても巧みで生物に興味を持たせるのが上手だなあと思いました。教えてもらった知識がどんどんつながって広がっていく感じがあり、医学部に入ってからも生物は一番使う科目なのでとても役に立っています。
英語の辻谷先生には英語以外のあらゆる相談に乗ってもらって、先生がいなかったら今の私はいないと思います。本当にたくさんのアドバイスをいただき、お世話になりました。
――再受験を決めてからの勉強はいかがでしたか。
M:本格的に勉強を始めたのは休学した後期からだったので、一般入試でいろいろなところを受けましたが、自分でも厳しいなと思っていました。看護学部に行ってから自分が直接治療に携わりたいと思うようになったので、医学部の他に歯学部も受験しました。
――岩手医科大学の歯学部を受験した時に転部試験のことは頭にありましたか。
M:ありました。実際に入学してからも同学年には転部試験を考えている人がたくさんいました。ただ、私の時は1年次の後期試験が終わってから3週間後に転部試験があったので、そこで燃え尽きてしまって受けられなかった人も結構いました。
他には転部試験を受けるつもりで入学しても、友達と別れたくないとか、同学年同士で絆が生まれたり、歯学部の勉強を面白く感じてきたりといった理由で受けない人もいました。
医学部への転部のことを「M転」と呼ぶのですが、M転だけを考えていると精神的に追いつめられて、歯学部の成績も下がってくるので、自分はバランスよく生活するようにしていました。
※岩手医科大学の構内の様子です
歯学部の勉強も手を抜かずにやりました
――岩手ではどのように生活していましたか。
M:1年次は寮に入っていました。医学部は1年次全寮制で他学部は希望すれば寮に入れますが、M転狙いの子は情報がほしいのでほぼ全員寮に入っていました。
※寮のある日の食事です
私は歯学部の臨床講義を受けて面白いと思えたので、歯学部の勉強も手を抜かずにやっていました。転部試験は受けるつもりでしたが、歯科医師になってからのプランも自分なりに考えていました。私の家は医療系の家庭ではないので、後を継ぐといったこともなく、将来のことは自分で決める必要がありました。
学生生活を送りながらアルバイトもしていましたし、転部試験の勉強も歯学部の後期試験が終わってから本格的に始めました。転部試験までの3週間は一生懸命死ぬ気でやりましたけど(笑)
――差し支えのない範囲で歯学部の成績について教えてください。
M:私は現役生の時から自分の要領がよくないことを自覚していたので、まずは目の前の課題をしっかりやるようにしていました。後期の途中で転部試験の募集要項が出るのですが、並行して勉強するのは自分の場合不可能に近いと思いましたので、歯学部の勉強も手を抜くことなくやっていて、1年次の最終順位は2位でした。
――2位!すごい!
M:いえ、でも転部試験の学科試験は難しかったです。学科試験の問題は1と2があって、1は歯学部で履修した専門科目、2は医学部の履修範囲から出題されます。2は大学から公開される資料があるので私はそれを隅々まで繰り返しやりましたが、中には医学部の友達から資料をもらって勉強している子もいました。
――学科試験はどのぐらいできたと思いますか。
M:難しいと言っても、全部が難しいわけではなくて解ける問題もあるので、そこでいかに落とさないかが大事だと思います。私は1問の配点が高い2の医学部履修範囲に力を入れて、知識で解ける問題はなるべく落とさないようにしました。1の歯学部履修問題も医学部の範囲から出たりするので、誰がどうやっても解けないだろうという問題よりも、解ける問題で確実に取るようにしました。1よりも2の方が自分ではできたと思います。
それでも学科試験は途中で退出する人が結構いて、私はこんなにわからない問題があるのに皆は余裕でできたんだと思って落ち込んでいました。1次試験の合格発表を見たら、3人しか受かっていなくて、自分がその3人に入っていたので驚きました。
――最後まで教室を出て行かずに粘って良かったですね。
M: 2次試験は面接ですが、スタンダードな志望理由を聞かれた後は、普段の生活はどうしているかや、勉強する時にわからない問題があったらどうするかなど、実際に医学部に入ってからのことを想定したような質問を聞かれました。
※学内には勉強できる共有スペースがあちこちにあります
将来は地域医療で患者さんと関わりたい
――医学部に2年次から転部してみてどうですか。
M:2年次前期の範囲が1年次の延長だったこともあり、最初は勉強が大変でした。2年次後期から解剖が始まり、体力的には大変ですが試験は少なくなって少し楽になりました。
――医学部での成績はいかがですか。
M:大丈夫です(笑)歯学部の勉強を真面目にやれるなら心配ないと思います。私は受験の時も生物選択だったので、そのおかげで助かっている部分もあります。物理選択だとちょっと大変かもしれません。
――医師としての将来はどのように考えていますか。
M:今のところ、岩手に残るか地元に帰るか、半々で考えています。私は岩手ののんびりした空気が好きなので、自分が卒業した大学の病院で働きたいという気持ちはあります。
――今のところ進みたい診療科はありますか。
M:以前は小児科に進みたかったのですが、自分には向いていないと思うようになりました。今はポリクリ(臨床実習)が始まってから自分に合ったところを選びたいと思っています。もともと地域に根ざした医療がしたいので、最終的には患者さんたちと触れ合える地域医療に携わりたいと考えています。
後輩へのメッセージ
――医学部を目指している受験生にメッセージをお願いします。
M:医学部に行きたいと思えば思うほど、勉強もいっぱいしなければいけなくて辛いと思います。そういう時は具体的にどうして医師じゃないといけないんだろう、医師じゃないとできないことってなんだろう、と考えることでモチベーションが上がると思います。どうしても医学部に行かなければいけない理由を自分で見つけることができれば、受験勉強も頑張ろうと思えます。自分の将来を具体的にイメージすることが大事だと思います。
――誰もが合格するまでは不安を抱えていますものね。
M:岩手は本当にいいところです。海の幸は美味しいし、スーパーに売っているものが新鮮で安く、あったかい人が多いです。
受験勉強と医学部や歯学部に入ってからの勉強は全く違います。入学したら数学や物理を使うことはほとんどなく、生物が好きであれば問題なくついて行けます。医学部に行きたいという気持ちがある人は、勇気を持ってチャレンジしてほしいと思います。
※岩手医科大学は2024年度入試から「医学部入学試験利用選抜」を実施します。詳しくはこちらをご覧ください。