
多浪生に共通しやすい勉強の落とし穴と、その処方箋 ―「努力しているのに伸びない」本当の理由―
こんにちは。
メルリックス学院渋谷校教務統括の川端政克です。
医学部専門予備校にいると、多くの多浪生を指導する機会があります。
どうすれば彼らが医学部受験という壁を突破することができるか? どう指導すれば彼らがこれまでできなかったことができるようになるのか? |
私自身も日々試行錯誤していますが、先生方も試行錯誤しています。
どうすれば努力しているのに伸びない多浪生を合格に導けるのか?
それはきっと多浪生のみならず、「努力しても伸びない」医学部受験生にも当てはまるのではないかと思います。
どうすれば彼らを合格させることができるのか。
メルリックス学院渋谷校で日々教鞭を取っている物理科の辻講師(東日本ブロック講師長)と化学科の松田講師と徹底的に話し合いました。
現時点で我々が考えている指導方法について書いてみようと思います。
目次[非表示]
多浪生によくある3つの特徴
医学部受験において、多浪生が必ずしも不利とは限りません。
しかし現場で指導していると、「努力量に対して成果が出にくい」タイプの多浪生には、いくつか共通した特徴が見られます。
今回は、その特徴を整理しながら、「では、どう改善すればよいのか?」を勉強法の設計という観点から考えてみます。
まず、多浪生を教えていると共通する特徴があることに気づかされます。
1.誰も知らない知識を知っていることがカッコいいと思っている
長く浪人しているだけあって、彼らは普通の受験生が知らないような極端な知識を知っていることも珍しくありません。そういった「誰も知らない知識」を知っていることがカッコいい?正義?とさえ考えている節があります。
しかし、その一方で基本的な知識が単発のままで止まっています。
合格した生徒は必ず口をそろえて「基本が大事」と言いますが、多浪生は基本事項の「用語・単語」は「聞いたことがある」というレベルでしか覚えておらず、理由・原理までわかっていません。
これでは単発の知識のみで因果関係や知識のつながりがないので、覚えている知識で解くことが前提となり、「その場で何かを生み出す」勉強法の存在を知らないまま何年も浪人を重ねてしまっています。
2.言葉だけをそのまま覚えることが「暗記」と思っている
医学部受験に合格するためには基本事項の暗記が必要です。しかし、彼らは言葉だけを覚えることが「暗記」だと思っています。覚える際に「イメージ」を利用して「映像」と結びつけて覚えていないので、因果関係や知識のつながりがありません。
そのため、問題を読んでも状況確定をしないまますぐ公式に代入しようとします。要は「考えていない」まま勉強しているのです。
彼らを教えていると「忘れてました」を多用することに気がつきます。
彼らにとって勉強は「言葉の暗記」であり「覚えている」か「忘れている」かなのです。教科書そのままの言葉を覚えてしまおうという発想で勉強しており、そこから先につながりません。
3.わからない問題は経験値だけで解く
彼らは経験値だけで問題を解こうとします。そのため、分からない問題は全て勘で解いています。
そのため、なぜ間違えたかがわからないため敗因分析ができません。
こちらが論理的に改善点を指摘しても、そもそも間違えた箇所は勘で解いているので、大きな変化につながるような改善策を自分で考えることができません。
通常であれば、
①自分はどんな考え方をしていたのか ②その考え方のどこを改善すればいいのか ③新たに構築した考え方を組み込んだ自分の解法体系を再構築していく |
といった3つのステップを踏んで学力が伸びていきますが、自分の考えを言語化できないと、大きな変化につながるような改善策を自分で策定できません。
4.分からない問題にぶつかった時に誤魔化そうとする
彼らを見ていると、分からないことそのものが苦痛というよりも、「分からない状態に耐えられない」「分からない自分を直視したくない」という反応が見られます。
分からない問題を突破しようとするのではなく、分からない問題でもとりあえず答えだけ出す、答えらしきものを書いておけばいいという誤魔化しに走りがちです。
これは長年の蓄積による『逃げ癖』だと思っています。
言語化できなければ改善もできない
これらの特徴を抱えた多浪生は、要するに一言でまとめると「考えていない」まま勉強してしまっていると言えるでしょう。
ちなみに、この「一言でまとめると・・・」「(共通部分を)別表現で表すと・・・」といった思考を抽象化する作業をしないのも多浪生の特徴です。これを私は“外的フォーカス”の欠如ととらえていますが、再現性を意識した言語化という発想がないように思われます。
基本的知識が単発 →因果律がない →再現性がない →改善点を発見・訂正できない(デバック作業ができないとも言い換えられる) |
これでは学力があるところまで止まってしまい、医学部合格という壁を超えられないのも無理はありません。
改善するために伴走者としてどうするか
さて、こういった生徒を教えていて、彼らにもレイヤーがあるのではという仮説を立ててみました。
(ちなみに、【演繹】・【帰納】・【類比】・【仮説】という発想がないのも彼らの特徴です)
layer1 全くの知識0(初学者:高校1〜2年生) layer2 聞いたことはあるレベル(知識のドットさえもできていない) layer3 知識はあるが,表面的(知識のドットの繋がりがない) |
「じゃあ、覚えなさい」ではなく、そこに生じた考え方のバグ自体を見つけて、講師も一緒にデバック(修正)していく。それも表面的なデバック作業にとどまらず、深層部分でのデバック作業をさせなければ、自分の考えが生まれることはありません。
たとえ時間がかかっても、「自分で見つけた答えは一生忘れない」はずで、「忘れても時間があれば思い出せることが正義!」という感覚を持たせることが大事です。そして、その途中過程にこそ、応用問題へのアプローチが隠れていることが多いと言えます。
そうすれば、問題を解いていて「本当に分からない」瞬間に手が止まり、そこから考えて突破しようという方向が出てくるはずです。
こういった場合、講師は徹底して伴走者として何度でも繰り返し教えることが必要でしょう。何度も教えた問題でも分からなくなった時に突き放さず、根気よく彼らの考え方のバグを見つけて一緒にデバック(修正)していく。
そのためには様々なアプローチの方法があるのではないかと考え、日々いろいろと試行錯誤しながら生徒と日々向き合っています。
最後に
彼らを教えていると、問題文を読んでいても「見える景色」が全く違うと感じます。
問題文のデータ把握が表層的であり、そのため内容把握自体を間違えてしまう。しかし、その間違いも「思いつき」なので、【野生の解き散らかし】になってしまっています。
それでは再現性がないため、改善点を発見・修正できません。
まずは、生徒の“見えている景色”をこちらが知ることが必要だと考えています。そこを乗り越えてこそ医学部合格、さらにその先の医学部の勉強に耐え得る知性が身につくと言えるでしょう。
これらは決して「国語力」という言葉で表されるような問題ではなく、“外的なフォーカス”(再現性を意識した言語化)の有無によるものと考えています。
多浪生の伸び悩みは、才能でも努力量でもなく、思考を鍛えるための「お題」が不適切なことが原因である場合がほとんどです。
これから必要なのは、どんな思考をさせたいのか、そのために、どんな問いを与えるのかという「お題設計」の視点。
医学部受験は、知識量の勝負ではなく、思考OSの完成度の勝負です。





